Contents
まとめ
-
売上は過去最高を更新、実質増益
Metaの2025年Q3売上は512億ドル(前年比+26%)で過去最高。表面上の純利益は27億ドルと83%減だが、米税制変更による一時費用159億ドルを除けば実質増益。この一時費用を除いた実質的EPS(1株当たりの純利益)は$7.25と予想超え。 -
広告事業が完全復活、AI最適化が牽引
広告インプレッション+14%、単価+10%。広告収入は前年比+26%でGoogleの広告成長(約+12%)を大幅に上回る。AIターゲティング精度の向上とリール広告の収益化が成長要因。 -
AIインフラ投資が急拡大、株価は短期調整
データセンターやAIチップへの支出が当初計画より40億ドル増の700億ドル超。2026年はさらに拡大見込み。長期成長を狙うが短期的に利益率は低下し、市場反応は一時的にマイナス。 -
Reality Labsの赤字続くが技術基盤は前進
AR/VR部門は売上4.7億ドル・損失44億ドル。新型Ray-Banスマートグラスは好調で、メタバースから現実拡張(AR)への転換が鮮明に。
記録的売上高の裏で「見かけ倒し」の減益
2025年7-9月期のMetaは売上512億ドル(約7.7兆円)を計上し、前年同期から26%もの成長を遂げた[1]。広告需要の追い風と自社の広告配信改善により、売上は市場予想を上回る記録的水準に達した。
一方で報告上の純利益は約27億ドルとなり、前年の156億ドルから大幅減少している[1]。この異常値の原因は米国税制変更に伴う一時的な税費用だ。トランプ政権期のいわゆる「Big Beautiful Bill(大型税制法案)」の影響で繰延税金資産の評価見直しが発生し、約159億ドルもの非現金の法人税費用を計上した[1][12]。この特別損失がなければEPSは実質$7.25に達し、ウォール街予想の$6.7を上回る好決算だった[1]。つまり、表面上の減益は会計上の特殊要因による見かけ倒しであり、Metaの収益力自体は前年以上に拡大していると考えてよいだろう。
こうした「幻の減益」にもかかわらず、市場の目線は厳しい。投資家はむしろ、急拡大する費用と先行投資に注目した。実際、売上26%増に対しコストは32%増と上昇ペースが上回り、営業利益率は40%へ低下(前年同期43%)した[13][14]。税要因を除けば純利益も増加しているものの、投資優先の姿勢が短期利益を圧迫している現状に市場は神経質になっている[5]。
広告ビジネスの復活 – AIが牽引する収益力
Metaの屋台骨である広告事業が力強く復調している。
同社アプリ群のデイリーアクティブユーザーは35.4億人に達し(+8% YoY)、圧倒的なユーザー基盤が収益の土台だ[15]。その上で、近年の広告低迷を招いた要因(Appleのプライバシー規制やTikTok競争など)に対抗すべく、MetaはAIを駆使した広告最適化に注力してきた。その効果は数字に表れており、配信広告量は前年比+14%増加、広告単価も+10%上昇し、両面での改善が確認できる[2][3]。結果として広告収入は四半期で500億ドル超と26%増となり、これは同時期のAlphabet(Google親会社)の広告収入成長を大きく上回る水準だ。
Alphabetも2025年Q3に初の四半期売上1000億ドル超えを達成する好調ぶりだったが、収益成長率は総売上で+16%に留まっている[16][17]。Metaは世界的広告需要の回復と自社のAI活用によるターゲティング向上によって、デジタル広告市場でシェア奪回を果たしつつあるといえる。
専門家も「Metaは数年間の迷走を経て本来の強みに立ち返り、ユーザーの注意をスケールさせそれを収益化するという芸当を容赦なくやり遂げ始めた」と指摘する[7]。
かつて「メタバース」路線への傾斜で停滞感もあった同社だが、今やAI投資が広告利益に直結している。広告主向けツールはAIで精度が増し、ターゲティングは賢くなり、短尺動画のReelsも遂に収益の柱に育ち始めた[7]。実際Instagramのリール動画はTikTokに肉薄する勢いで存在感を増し、YouTubeのショート動画とも広告費獲得競争を繰り広げている[18]。広告主にとってMetaプラットフォームの投資対効果は依然として魅力的であり、多少のブランド安全性リスクが指摘されても「巨大なリーチと成果の前では大勢に影響はない」という声もある[19][20]。AIによる広告配信最適化と多様なフォーマット(リール、メッセージ、ストーリーズ等)の拡充が功を奏し、Metaはデジタル広告帝国としての地位を堅持している。
さらに注目すべきは、新たな広告在庫の創出だ。2023年に立ち上げたスレッズ(Threads)やWhatsApp上での広告枠開放など、Metaは X(旧Twitter) やTikTokから広告主を奪うべくプラットフォーム拡大を進めている[3]。これは広告主にとって代替の少ないTwitterに代わる受け皿や、新興SNSへの対抗軸となり、Metaの広告エコシステムはますます盤石になりつつある。
AIインフラへの巨額投資 – 「スーパーインテリジェンス」への賭け
Metaの決算説明でひときわ強調されたのは、AI分野への前例のない投資拡大だ。
同社は近年AI研究開発体制を再編成し、2025年6月には社内に「Meta Superintelligence Labs」という組織を立ち上げている[21]。そこへDeepMindやOpenAIからトップ研究者を引き抜くなど積極採用を行い、AI人材約3,000名規模の精鋭チームを構築した(採用しすぎた600名を削減する場面もあった)[22][23]。マーク・ザッカーバーグCEO曰く「業界で最も高密度に才能が結集したラボ」が既に実現しており、「業界トップクラスの計算資源も備えつつある」という[24]。AI超研究集団の創設と膨大な計算インフラの構築――この両輪がMetaの未来戦略の中核となっている。
では、Metaは何を目指してそこまでの投資をするのか。そのキーワードが「Superintelligence(超知能)」である。人間の知能を上回る汎用人工知能の実現を見据え、Metaはその夜明けをリードする構えだ[6]。ザッカーバーグ氏は「スーパーインテリジェンス実現の楽観的なタイムラインに備えるため、必要なインフラを先行投資で前倒しするのが正しい戦略だ」と語り、最も早いシナリオに対応できる計算能力を確保すると断言した[25]。仮に到来が遅れても蓄えた計算リソースは既存事業の高度化に充当し、無駄にはしないという[26]。要するにMetaは「AI革命」に社運を賭け、来るべきブレイクスルーに先んじて巨額投資を惜しまない方針なのだ。
この戦略の裏側には、AIインフラ獲得競争で後手に回った反省と巻き返しの決意が見て取れる。
ライバルのGoogleやMicrosoftもAI用途のデータセンター投資を急拡大しており、例えばAlphabetは来年度に910~930億ドルを設備投資に投じる計画と発表した(当初予算750億→直近見直し850億からさらに上積み)[27][28]。まさにテック大手間で「AI軍拡競争」が繰り広げられており、各社の資金力と技術力を総動員した開発競争に突入している。MetaはNvidiaの最新AIチップを大量購入するトップ顧客の一つとなり[29]、米ルイジアナ州にはBlue Owl Capitalと組んで総工費270億ドル規模の超大型データセンター(プロジェクト名: Hyperion)建設にも乗り出した[30][31]。こうした動きは業界内でも「AIバブルではないか」との声を招くほど凄まじい規模だ[32]。投資負担の増大に対し、市場では「莫大なAIインフラ投資と短期利益への期待との緊張関係が高まっている」[33]と指摘され、CEOたちは成果を示すよう迫られているのが現状である。
Meta経営陣はこの懸念に対し、長期的視野での説明を行っている。CFOのスーザン・リー氏は「2026年の費用増加率は25年を大きく上回る」としつつ、その主因はインフラ(クラウド利用含む)と減価償却費であり、人件費もAI人材の通年給与が嵩むため増えると説明した[34][35]。要は足元の費用膨張は未来の成長機会への投資であり、短期的な利益率低下は織り込み済みだと強調している。実際ザッカーバーグ氏も「AI研究が新たな技術的能力を可能にし、それが様々な製品に組み込まれていく。数十億規模の利用者に新プロダクトを届けられる我々には巨大な潜在機会がある」と自信を見せた[36][37]。もっとも、この楽観論だけで市場を安心させるには至らず、決算発表直後には複数の証券アナリストが目標株価を引き下げる動きも報じられた。巨額投資の成果が見える化するまで、株主との緊張関係は続きそうだ。
メタバースからリアリティラボへ – 次世代プラットフォームの模索
一時は「メタバース」戦略で世間を賑わせたMetaだが、最近の同社からはその言葉は聞こえなくなった。代わりに語られているのが、現実世界と接続するハードウェアへの取り組みである。2025年Q3には、提携先のRay-Banブランドからスマートグラス(Ray-Ban Meta Smart Glasses)の新モデルが発売された。レンズにテキストや地図を表示できる小型ディスプレイを内蔵した意欲作で、発売直後には在庫切れが報告されデモ予約も11月まで埋まるほどの注目を集めたという[38][39]。これはスマートフォン以降の「次のコンピューティングプラットフォーム」になり得るデバイスとして位置づけられ、業界関係者からも「将来的な可能性は大きいが現時点では技術好奇心の強いアーリーアダプターが主な顧客になるだろう」と冷静な見方も出ている[40][41]。同じく昨年発売のVR/MRヘッドセット「Quest 3」も含め、MetaはARグラスとVRデバイスの両輪で次世代プラットフォームを模索している状況だ。
しかし、この分野の収益化は依然遠い。
決算によると、AR/VR事業を含むReality Labs部門のQ3売上高はわずか4.7億ドルで、営業損失は44億ドル超にのぼる[42]。巨額の赤字垂れ流し状態には変わりないが、前年同期の損失(約45億ドル)からわずかな縮小傾向も見られる[43]。ザッカーバーグ氏は「AIグラスで業界をリードしている」と自負し、Ray-BanやOakleyとの協業も順調でこれらへの投資は将来大きな利益をもたらすと強気だ[44]。実際、初代のカメラ付きサングラス(Ray-Ban Stories)はガジェット好きを中心に予想外のヒットとなった経緯もあり、同社としては消費者向けハードウェアへの挑戦を諦めていない。ただしプライバシー面の議論もつきまとい、例えばスマートグラスの録画インジケーターが改造で無効化できてしまう問題が報じられるなど[45]、普及に向けては技術以外の課題も多い。メタバースという仮想世界そのものより、まずはリアル世界と接続するデバイスで足場を築く――Metaはそうした現実路線で次の収益の柱を探っているように見える。
Googleとの比較: 広告帝国の明暗と多角化
Googleの決算についてはこちらの記事も参照されたい。https://legare.tech/2025/10/30/alphabet_2025q3_finance/
同時期に発表されたGoogle親会社Alphabetの2025年Q3決算も、Metaとは対照的な示唆を与えている。Alphabetは四半期売上高1,023.5億ドルと史上初の1000億ドル超えを達成し、市場予想(約999億ドル)を上回った[16]。広告事業は依然全収入の7割強を占め主力だが、成長率は前年比+12.6%に留まり[4]、売上全体の伸び(+16%)にはクラウド事業など他分野の寄与が大きかった。特にGoogle Cloudは売上151億ドル(+約22%)と急伸し[46]、営業利益も黒字転換しているとみられる。これに対しMetaは売上の97%以上が広告収入であり、収益構造の多角化という点で両社には大きな差がある。Metaの非広告収入はReality Labsと手数料等の「その他」収入を合わせても約11億ドル(全体の2%強)に過ぎない[47][48]。つまりMetaはデジタル広告一本足打法に近く、Googleのようなクラウド第二の柱は育っていない。もっともその分、主力広告事業の成長率ではMetaがGoogleを凌駕しており、ソーシャルメディア広告の復権を印象づけた。
両社の共通点は、AIへの巨額投資という経営課題に直面していることだ。Alphabetも決算で来年度の資本的支出を910~930億ドルに増額し、その大半をAI目的のデータセンター拡充に充てる計画を明らかにした[49]。これを受け市場は好感し、Alphabet株は発表後に上昇した[50]。一方、Metaの場合は先述の通りAI投資増大が嫌気され株価は下落している。両社の違いは何か。一つには業績発表時点での市場の期待値だ。Googleは広告もクラウドも堅調で「好決算+前向き投資計画」という理想的な内容だったのに対し、Metaは表面EPSが一時要因で大幅ミスとなり(調整後は予想超えでも)市場の一部に誤解を与えた面がある[51]。またMetaは前年までのメタバース投資への不安が残る中での再度の巨額支出宣言であり、「また株主軽視の浪費に走るのか」という懸念が根強かった可能性もある。対照的にGoogleはクラウド成長が投資家の安心材料となっており、AIへの投資も主にその成功体験の延長線上で捉えられている。加えてGoogleは検索連動広告という収益エンジンが堅固で規模もMetaより大きく、AI時代にも容易には揺らがないとの見方が強い。要するにMetaは高成長ゆえの将来性と単一収益源ゆえの脆さを併せ持ち、Googleは安定多角路線でリスクを分散していると言えよう。
もっとも、デジタル広告市場全体で見れば両巨頭が再び牙城を固めつつある点は見逃せない。近年TikTokやAmazonの台頭で広告費シェアが分散していたが、2025年は景気好転の期待もあり広告主は実績のあるプラットフォームに回帰する動きを見せている[52]。米国では金利高止まりを経て今後の緩和観測も出始め、広告出稿環境は改善傾向だ[52]。その中でMetaとGoogleが世界のデジタル広告費の半分以上を二分する構図が再強化されている[53]。広告主も新興SNSでの実験より巨大プラットフォームでの確実なリーチを重視し始めており[54][55]、この潮流は今後も両社の収益を下支えするだろう。
まとめ: 常識を覆す躍進と今後の課題
2025年Q3のMeta決算は、同社が逆風を乗り越えて復活しつつあることを印象づける内容だった。かつてAppleのプライバシー制限やTikTok急伸でFacebook帝国の黄昏が囁かれたが、MetaはAIという切り札で広告ビジネスを蘇らせた。従来の常識では「AI投資=コスト増」で短期利益を圧迫するマイナス要因と見られがちだった。しかしMetaの場合、AIが広告の収益性向上に直結し“コストが利益を生む”構造を作り始めている点で新たな常識を打ち立てつつある[7][56]。事実、広告マージンの改善や売上高営業利益率の高さ(税控除前なら50%以上)は、AI活用で効率を極限まで高めていることの証左と言える。さらに月間ユーザー数が世界人口の半数近い35億人超という規模は他の追随を許さず、ここから得られるデータとネットワーク効果が今後のAIプロダクト開発にも比類なきアドバンテージとなるだろう。
一方で、巨額投資のリスクと不確実性も忘れてはならない。AI研究競争は成果が見えるまでに時間がかかり、その間の投資回収は未知数だ。Meta自身、2024年以降は売上成長率の鈍化や費用増による短期利益率の低下を覚悟するとしており[34][35]、株主の忍耐が試される局面が続く。さらに規制リスクも現実味を帯びる。欧州では個人データに依存しない「Less Personalized Ads(あまりパーソナライズされない広告)」への切り替えを当局から要求されており、対応次第では欧州市場の収益が大きく棄損しかねない[57]。米国でも未成年ユーザーの保護や独占禁止の動きがあり、巨大プラットフォームへの風当たりは強い。こうした外部要因がせっかく復調したMetaの成長にブレーキをかける可能性は十分にある。
結局のところ、Metaの命運は「現在の巨大コミュニティをいかに収益化し続けるか」と「未来のプラットフォームをいかに創造できるか」の両立にかかっている。2025年Q3決算はその両面で希望と課題が交錯した。目先では広告事業が驚異的な適応力で復活し、競争優位性を発揮している。一方で長期ではAIへの先行投資という大博打に打って出ており、その成果が実を結ぶ保証はない。まるで高速走行しながらエンジンを載せ替えているような大胆な戦略だが、それを支えるのはMetaという企業の並外れた実行力とリソースである。そしてその進化の鍵はAIが握っている。Metaは自ら構築した巨大な アテンションエコノミーをテコに、AI時代でも覇者であり続けるつもりなのだろう。その野心が現実となるか否か、今後数年の歩みがテック業界全体の趨勢をも左右するに違いない。
参考文献:[58][12][33][2][27][7][59][42][60][57]
[1] [8] [9] [19] [20] [22] [23] [30] [31] [34] [35] [36] [37] [40] [41] [44] [45] [51] [58] Meta reports mixed financial results amid spree of AI hiring and spending | Meta | The Guardian
https://www.theguardian.com/technology/2025/oct/29/meta-earnings-report
[2] [3] [5] [6] [7] [10] [11] [12] [18] [21] [24] [25] [26] [29] [32] [33] [56] [59] Meta forecasts bigger capital costs next year as Zuckerberg lays out aggressive AI buildout | Reuters
https://www.reuters.com/business/metas-profit-hit-by-16-billion-one-time-tax-charge-2025-10-29/
[4] [17] YouTube Q3 Ad Sales Up 15% to $10.2B, Alphabet First Quarter …
https://variety.com/2025/digital/news/youtube-ad-sales-q3-2025-alphabet-google-earnings-1236564829/
[13] [14] [15] [57] Meta – Meta Reports Third Quarter 2025 Results
[16] [27] [28] [46] [49] [50] [52] [54] [55] [60] Google parent Alphabet beats forecasts with first $100bn quarter | Alphabet | The Guardian
https://www.theguardian.com/technology/2025/oct/29/alphabet-earnings-report-latest-record-quarter
[38] [39] [42] [43] [47] [48] Meta Earnings Recap: Stock Falls 9% on EPS Miss, Tax Charge – Business Insider
https://www.businessinsider.com/meta-earnings-stock-price-q3-report-ai-live-updates-2025-10
[53] tiktok ads – Reports, Statistics & Marketing Trends | EMARKETER


