Amazonの広告管理画面は、人が操作するものではなくなるのか。
2026年9月29日(米国時間)、Amazon Adsがサンフランシスコの年次イベント「unBoxed 2026」(9月28日〜30日)で、広告基盤の大幅な刷新を発表した。広告管理画面とAmazon DSPが統合されて「Amazon Ads Agent」になり、その上に新しい買い方と会話型の広告フォーマットが載る。
発表は多いが、軸は1本だ。広告主が目標と予算とクリエイティブを渡し、実行はAmazonのAIが握る。確認できた範囲で整理する。
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目次
AdExchangerによると、Amazon Ads consoleとAmazon DSPが統合され、「The Amazon Ads Agent」として再ブランドされた。Amazon DSPという製品名は消え、DVA(display, video and audio)という名称に置き換わる。Adweekは、従来のAd Consoleに代わる新プラットフォームだと伝えている。
Ads Agent自体は新顔ではない。2025年のunBoxedで、チャットでターゲティングや入札を補助するツールとして登場していた。今回はその仕組みが広告基盤全体を動かす。Amazon AdsのVPであるKelly MacLeanはAdweekに対し、単なるリブランドではないと説明した。外部のAIエージェントから広告運用を操作するMCPサーバーについては、過去記事で取り上げている。
AdExchangerは、2019年にSizmekの広告サーバー事業を買収して以降、Amazonの広告基盤は「clunky」(もたついた)と見られてきたと書く。Twitch、Fire TV、Amazonのサイトとアプリ、オープンウェブの配信網がうまく噛み合わず、他社では当たり前のツールも欠けていた。統合はその評判への回答だろう。
新しい買い方は2つある。
| Full-Funnel Campaigns | DVA+ | |
|---|---|---|
| 範囲 | スポンサー広告、ディスプレイ、動画、ストリーミングTVを1キャンペーンに | Sponsored Display、Sponsored TV、プログラマティックのディスプレイ・動画・音声を統合 |
| 広告主が渡すもの | 商品、クリエイティブ、予算 | 目的、予算、クリエイティブ |
| 最適化の軸 | 新規顧客、Long-Term Sales | Brand+とPerformance+ |
| 提供状況 | 米国の全広告主 | 米国で拡張クローズドβ |
出典はMarketing Dive、Digiday、PPC.Land。
DVA+のスケジュールは媒体で表現が分かれる。PPC.Landは2026年10月下旬にオープンβ、2027年第1四半期に35市場で一般提供と報じた。Marketing Diveは10月下旬から年末にかけて全広告主へ展開すると書く。
DVA+は4ステップで作れる簡易モードを持ち、頻度上限、ディール、入札、オーディエンスなど従来型のプログラマティック設定は詳細設定の奥に置かれる。DSPを専任で回す体制のない中小にも、DSPの入口が開く設計だ。
一方でFull-Funnel Campaignsは、手綱を大きく手放す商品になっている。Digidayによると、広告主はクリエイティブを承認できるが、個別のチャネルや特定のオーディエンスは選べない。見えるのはフォーマット単位まで。オーディエンス側の透明性は改善を検討中だと、Amazon幹部はDigidayに述べている。
Amazonが共有した事例では、ドッグトリーツのCanine Naturalsが206日間でFull-Funnelを運用し、売上の41%を新規購入者から得た。ただしPPC.Landが指摘するとおり、Amazonが示す成果数値はすべて自社の内部データで、第三者の検証はない。
チャットボットの中の広告が、具体的な商品として揃ってきた。
Amazon Adsのチャット機能は、メディアプランニングやAIターゲティング、自然言語での分析などに拡張され、20マーケットプレイス・21言語の対象広告主にβ提供される(Marketing Dive)。自然言語でターゲティング提案を適用した広告主は、平均でユニーク顧客が25%以上増え、インプレッション単価が10%以上下がったという。これもAmazonが示した数字だ。
広告フォーマットでは次の3つが軸になる。
注目したいのは、ブランドが渡せるのは入力までという線引きだ。AdExchangerが確認したところ、ポジティブなレビューを選んでAIの推薦に使わせることはできない。ガイドラインに反する情報や虚偽の情報を入れると、Amazonがコンソール上でフィードバックする。広告主に許されるのは、AIの材料を整えることまでになる。
外部でも動きがある。2026年9月10日から、Amazon DSP経由でChatGPT内の広告を購入できるようになった。米国の一部広告主に限ったパイロットで、Delta Vacationsが最初の参加ブランドに名を連ねる(Digiday)。eMarketerのアナリストは、OpenAIはまだ広告販売の基本機能を作っている途中だと指摘する。Amazonは過去18か月ほどで、NetflixやRoku、Spotifyなどの在庫も取り込んできた。会話型もその延長で押さえにきた形だ。ストリーミングTV側の在庫拡大は、Amazon Ads Upfront 2026の記事で扱った。
Digidayは、AIに任せる範囲が広がるほど広告主が確認すべき点が増えると指摘する。エージェントが予算とクリエイティブに何をしたか監査できるか。サードパーティのデータ、ID、計測とどう連携するか。手数料、供給源、オークションの仕組みが不透明にならないか。
背景には訴訟がある。2026年8月、FTCと22州の司法長官が、Sponsored Productsのオークションに秘密の追加料金を使い、広告主に過剰な支払いをさせたとしてAmazonを提訴した。Amazonは争っている。Digidayが個々の落札価格の決まり方を示すのかと尋ねると、Amazonはそこまでの透明性を約束しなかった。
今回読んだ記事には、日本での提供時期も対象範囲も書かれていない。35市場の内訳は確認できなかった。まずAmazon Adsの担当者に日本での提供時期とβ参加の可否を聞くのが先だ。
その上で、準備できることが3つある。
会話型の広告枠は、検索結果の広告と違って掲載順を競う場ではなく、AIが何を薦めるかの材料を競う場になる。その材料作りは、商品ページの整備というごく地味な作業から始まる。