2026年10月27日、LINEヤフーが法人向けの AI エージェント「Agent i Biz」の提供を始めました。チャットで話しかけるだけで、広告の実績分析や次の施策づくりを手伝ってくれるサービスです。
同じ10月、米国では ChatGPT 広告の費用対効果を疑う声が広告主の側から出ており、英 Daily Mail は AI の回答に載るための GEO(生成 AI 向けの検索最適化)を新しい商品にしようと動いています。AI エージェントは、広告を運用する場面、広告が表示される場面、AI の答えに載る場面の3か所に同時に入ってきました。それぞれの現状を、原典の数字とともに見ていきます。
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AI エージェントとは、人の指示を受けて、調べものや作業を自分で進める AI のことです。広告の世界では、いま次の3つの場面で使われ始めています。
| 場面 | 何が起きているか | 主な事例 |
|---|---|---|
| 運用する | 広告の分析や施策づくりを AI が手伝う | LINEヤフー Agent i Biz |
| 広告を出す | AI との会話の中に広告が表示される | LINEヤフー Agent i、ChatGPT 広告 |
| AI の答えに載る | AI が引用する情報源に自社の情報を載せる | Daily Mail の GEO テスト |
Agent i Biz は、専門知識や運用の人手が足りない事業者に向けたサービスです。LINEヤフーの2026年10月27日のプレスリリースによると、第1弾として専用の Web アプリで次のことができます。
今後は、Agent i Biz 専用の LINE公式アカウントを用意するほか、MCP(Model Context Protocol、AI と外部の仕組みをつなぐ共通規格)を通じて、導入企業の自社 AI エージェントや社内システムともつなげる予定です。
LINEヤフーの強みは、検索とメッセージの両方のデータを持っている点にあります。分析から次の一手まで1つの画面で済むなら、運用担当者が1人しかいない中小企業ほど助かるはずです。
LINEヤフーは、AI エージェント「Agent i」の中でも広告を出し始めています。RTB SQUARE の2026年9月2日の記事によると、ディスプレイ広告(運用型)は2026年7月23日から、検索連動型ショッピング広告は2026年8月31日から課金を始めました。ユーザーが AI と話すうちにニーズがはっきりしたところで、関連する広告を出す仕組みです。
米国では ChatGPT 広告が先行しています。Modern Retail(2026年10月9日)が伝えた Sensor Tower のデータは次のとおりです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 2026年8月に ChatGPT に広告を出した広告主の数 | 1,400超(前月比8%増) |
| 2026年9月の出稿額シェア 1位 Capital One | 4% |
| 同 2位 Expedia | 3% |
| 同 3位 Cloudflare | 2% |
| ChatGPT広告 出稿額シェア上位3社(2026年9月) | ||
| Capital One | 4% Sensor Tower | |
| Expedia | 3% Sensor Tower | |
| Cloudflare | 2% Sensor Tower | |
| 出典: Sensor Tower(Modern Retail、2026-10-09 経由)。棒の長さは3社間の相対比較用 | ||
広告主は増えていますが、中心は大企業です。そして成果はまだ出ていません。計測会社 Measured の Terence Einhorn 氏は、ChatGPT のクリック単価に相当する費用は Google の約6倍だと話しています。結果について同氏は、新しい広告プラットフォームとしては驚くことではないとしつつ、かなり悪いと評しました。
| クリック単価の比較(Google広告を基準) | ||
| Google広告 | 1倍(基準) | |
| ChatGPT広告 | 約6倍 | |
| 出典: 計測会社Measured・Terence Einhorn氏(Modern Retail、2026-10-09 経由) | ||
Einhorn 氏はもう1点、重い指摘をしています。購入意欲の高いユーザーに広告を出しても、その多くはもともと買うつもりの人なので、売上の上乗せ(インクリメンタリティ)になっていないという点です。同氏はこれを、自社の売上に補助金を出しているようなものだと表現しました。
なお、ChatGPT広告については「ChatGPT広告 日本展開へ:OpenAI求人と公式発表から読む5つの準備ポイント」でも取り上げていますので、併せてご覧ください。
ChatGPT広告の詳細については「Criteo、ChatGPT広告パイロットに初のアドテクパートナーとして参入 ・・・AI広告のプログラマティック化が始まる?」をご参照ください。
3つ目の場面は、広告枠を買うのではなく、AI が答えるときに引用する情報源に入り込むやり方です。
Digiday(2026年10月26日)によると、Daily Mail は米国・英国・オーストラリアで12〜15件の GEO テストを進めており、2027年初めに正式な商品にする予定です。手順は3段階。
金融系のあるブランドのテストでは、対象プロンプトでの露出率が約50%から75%近くまで上がったといいます。
| Daily Mail GEOテスト:対象プロンプトでの露出率(金融系ブランドの例) | ||
| テスト前 | 約50% | |
| テスト後 | 75%近く | |
| 出典: Digiday(2026-10-26) | ||
計測の難しさも見えてきました。あるブランドでは、アクセス解析上の Claude 経由の流入は0.1%だったのに、顧客に「どこで知ったか」をフォームで尋ねると、コンバージョンの約11%を占めていました。AI の影響は、リンク経由の流入だけでは測れないということです。
| 測り方で変わるClaudeの影響(あるブランドの例) | ||
| アクセス解析上のClaude経由流入 | 0.1% | |
| フォーム回答(どこで知ったか)でのコンバージョン | 約11% | |
| 出典: Digiday(2026-10-26)。棒の長さは両指標間の比率に対応 | ||
3つの場面を並べると、成熟度にははっきり差があります。
筆者は、日本の広告主がいま予算を割くべき順番は、運用支援、GEO、会話内広告の順だと考えます。
運用支援を先に挙げるのは、成果を測りやすいからです。Agent i Biz のような道具は、分析にかかる時間が減ったかどうかで効果を判断できます。会話の中の広告は逆です。Google の約6倍という単価で、しかも上乗せの売上が出ているか分からないなら、年末商戦の本予算を入れる段階ではありません。
GEO は、その中間にあります。広告枠ではないので単価の問題はありませんが、効果の測り方が固まっていません。Daily Mail の0.1%と11%の差は、アクセス解析だけを見ていると、AI 経由の効果を大きく見落とす可能性を示しています。日本でも、問い合わせフォームに「何で知ったか」の選択肢として ChatGPT や Gemini を加えるのは、今日からできる手です。
Einhorn 氏は、効果が分かるまで使えないが、使わないと効果は分からないという、ブランドが抱える板挟みも口にしています。そこで筆者は、会話内広告には小さな学習予算だけを充て、計測の設計を先に固めることを勧めます。
広告主にとって当面の宿題は、AI 経由の効果を測る仕組みを先に持つことです。