リテールメディアは、小売事業者業者が自社で保有する購買データを活用し、広告収益や販促効果を高める新たなチャネルを指す。プライバシー規制強化の中で実需が伴い、急速に拡大。単なる広告枠ではなく、高精度ターゲティングと売上直結を両立できる手段として、広告主や配信事業者の間で存在感を増している。
目次
一時のDMP、DSP、SSP、ヘッダービディングのようなバズワードの一つとして認知され、最近以前にも増して耳にすることが多くなってきているリテールメディア。一体何者なのだろうか。
アドテク文脈で語られるリテールメディアは概ね、以下のような意味合いを持つことが多い。
用例
あなたの立場(サイト訪問者、小売事業者、広告配信事業者、広告主、広告会社)によって見方は多少変わってくるが、上記の表はサイト訪問者以外、の立場での整理とする。
逆に、なにか物が欲しくてフラッとサイトに訪れた一般ユーザーからすると「こんな風に思われてるのか」と若干の薄気味悪さも感じるかもしれない。
Googleトレンド(検索)を見てみると、国内外で流行っている、と言って良いだろう。
ソース:https://trends.google.co.jp/trends/explore?date=2010-03-29%202025-04-29&q=Retail%20media#TIMESERIES
ソース:https://trends.google.co.jp/trends/explore?date=2010-03-29%202025-04-29&q=リテールメディア#TIMESERIES
特に日本のトレンドを見ると、2022年春から徐々に盛り上がりを見せ始め、秋ごろからグッと伸びている傾向にある。以下の発表も影響してそうである。
引用:CARTA HOLDINGS、リテールメディア広告市場調査を実施~リテールメディア広告市場は2022年に135億円、2026年には805億円と予測~
猛烈な成長率でリテールメディアが伸びると予測されたのである。2022年初頭に予測されたアジア太平洋地域のプログラマティック広告全体の市場規模のその後の見通しとしては、約5年で数%の伸び(ソース)であった一方、リテールメディアでの広告市場規模は500%↑伸びる、と予想されたのだから、騒然とした。
言わずもがな・・・デジタル広告の世界でプライバシー規制が強まり、外部から得ていた個人データ(サードパーティCookieなど)が使いにくくなったことがあります。前述の通り、多彩な自社データを保有できるため、脚光を浴びてきた。さらに、リテールメディア上の広告は広告を出す側(広告主、広告会社等)にとっても価値が高いためである。こちらも前出の図の通りだがユーザーの質が通常のメディアとは異なるのである。
あなたは常日頃、コンビニエンスストアなどでお会計待ちをしているとき、レジ横のお菓子などを、(最初から買う気は無かったのに)ついでに買ってしまう現象に遭遇したことはないだろうか。これと同じようなことがこのリテールメディア上でも期待できるのである。
先日、GoogleはサードパーティCookieについて、事実上「当面継続」を宣言した(Link)。広告主やDSPなどの広告配信事業者は安堵したものの、”Cookieレスの救世主”とも言われてきたリテールメディアは意味合いが薄れてしまうのか?
以下のポイントからすると、そうは言えず、リテールメディアは重要になってくると考える。
ポイント
“Cookie が残っても、引き続きファーストパーティーデータの活用は重要である” という事実は変わらない。また、小売事業者が保有する購買データは、オープンウェブ 上の Cookie より質・精度ともに優位であり、リテールメディアの価値はむしろ再評価されていくと考えた方が良い。
さらには、サードパーティCookieの代替(救世主)として考えられることがほとんどであったリテールメディアだが、フラットに考えてみると、広告のエコシステム維持には欠かせない、重要なステークホルダーにおける三方良しの姿を作ることができる。
このDigidayの記事にある通り、マーケターの間では「その商品、広告がなくても売れたのでは?」という点にフォーカスが当たるようになってきている。つまり単純に広告接触(クリック・ビュー)による購買(ROAS)だけを見ていても意味のある数値だとは一概には言いにくい。
広告配信事業者はその重要性・自社の手法を説いていたりもするが(ソース)、いちステークホルダーだけが推進していたのではあまり意味がない。IABは昨年2024年1月にリテールメディアにおける計測の標準を公開した(ソース)。
体系化されている、こちらのIABとBCG共同で作成したプレイブックもおすすめする。
こちらによるとインクリメンタリティ計測におけるベストプラクティスは以下のようにまとめられている。非常に長いので、ご興味ある方はクリック(タップ)して拡大されたし。
[su_spoiler title=”クリックしてIABとBCG共同のインクリメンタリティのベストプラクティスの和訳を見る” anchor=”BestPractice-Incrementality” anchor_in_url=”yes”]
手法(Methodologies)
ランダム化比較試験(RCT)またはA/Bテスト
個人をランダムに異なる条件に割り当て、その効果を統計手法(例:t検定、共分散分析、回帰分析)を用いて、2つのグループ間の効果を比較し評価する方法。
合成コントロール法(Synthetic Controls)
広告キャンペーン配信後に、広告に接触していないユーザーの中から、広告に接触したユーザーと類似した特性を持つグループを作成し、売上リフト(売上増加効果)を測定する方法。この際、購買行動やその他の行動などの要素を考慮し、傾向スコアリングや偏りを回避するための基準設定が重要。
マッチドマーケットテスト(Matched-Market Tests)
主に店頭メディア向けに用いられる手法で、類似した2つの市場を比較する。一方には広告キャンペーンを実施し、もう一方には実施しないことで、インクリメンタル効果(広告による純粋な効果)を観察する。インクリメンタルな売上効果を正しく隔離し、データバイアスを最小限に抑えるため、手法の厳密性が重要。
その他の機械学習モデル
キャンペーンによって引き起こされた特定の成果指標(例:売上やエンゲージメントの増加)を測定するために、より複雑な予測モデルを構築して使用する。
データの種類(Data Types)
決定論的データ(Deterministic Data)
正確なユーザーデータ(例:ログインデータ、ユーザーID、ロイヤルティプログラムデータ)
確率論的データ(Probabilistic Data)
統計的手法を用いてユーザー行動を予測するデータ。決定論的データが不十分な場合、複数プラットフォームにまたがるシナリオで利用される。
データソース(Data Sources)
メディア支出データ:各チャネルにおけるインプレッションやクリックに基づく支出額(決定論的)
売上データ:マーケティングKPI(売上成果指標、決定論的)
競合および市場環境データ:通常、第三者機関や公開データベースから取得
顧客の態度データ:例:顧客感情やブランド認知度(確率論的)
デジタルデータ:クリック率やウェブ解析データなど、デジタルプラットフォーム由来のデータ
※制約事項:リテーラーのエコシステム内でのインクリメンタリティ測定は、市場全体への影響を考慮しない可能性がある。
透明性(Transparency)
MRC基準は、インクリメンタリティ手法、前提条件、制約事項に関する透明性を重視している。
データ報告の正確性を確保し、定期的な検証を実施すること:
決定論的データに関しては、データの完全性、一貫性、信頼性を検証する。
確率論的データや合成データについては、確立された統計手法を使用し、実データでモデルを検証する。
監査に備え、ローデータを保存し、データ処理手順を文書化すること
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これまでの内容を振り返ると、リテールメディアは単なる流行ではなく、売上直結・プライバシー規制対応・高精度ターゲティングを兼ね備えた新たな広告チャネルとして定着しつつある。Cookie存続に左右されず、ファーストパーティデータ活用によるROI最大化が今後の競争力を左右する。
広告主・広告会社:リテールメディアをCookie代替ではなく並列活用と捉え、インクリメンタリティ(純増効果)を厳密に検証できる手法を検討 or ソリューションを提供するパートナーを選定す。
小売事業者:データ整備・計測標準準拠を進め、広告主に選ばれるプラットフォーム化を目指す。
広告配信事業者:リテール特有の高品質データを活かした新しい配信・分析手法をの検討。計測標準への準拠。