EPSが市場予想を上回ったのに、株価は7%以上下げた。
2026年7月16日、Netflixが発表した2026年第2四半期(4-6月期)決算は、数字だけを見れば悪くない内容だった。それでも翌7月17日の取引で株価は7%超下落している。Q1決算ではQ2のEPSガイダンスが市場予想を下回ったことが株安の主因だった。今回はEPS自体が予想を上回ったにもかかわらず売られている。何が変わったのか。
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目次
Q1決算時にNetflixが示したQ2見通しと、実際の着地を比べてみる。
| 指標 | Q2ガイダンス(4月時点) | Q2実績 | 差異 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 125.74億ドル | 125.6億ドル | ▲0.1% |
| 営業利益率 | 32.6% | 33.4% | +0.8pt |
| 純利益 | 33.27億ドル | 34.01億ドル | +2.2% |
| EPS | 0.78ドル | 0.80ドル | +0.02ドル |
出典: Netflix Q1/Q2 2026 Shareholder Letter
売上高はガイダンスとほぼ一致した。一方で営業利益率・純利益・EPSはすべてガイダンスを上回っている。ウォール街のコンセンサス(LSEG集計)との比較でも、EPSは0.79ドル予想に対し0.80ドルと上回り、売上高は12.59億ドル予想に対し12.56億ドルとわずかに届かなかった程度だ。
Q1では利益の弱さが懸念材料だった。Q2は逆に、収益性の面では上振れている。
直近の会員数や広告収入の推移は「Netflix 2025年Q4決算を徹底解説:会員数3.25億人突破と広告収入倍増の成長戦略【2026年最新】」で詳しく解説している。
売上成長率の減速トレンドが止まらないことが大きい。
前年同期比の成長率はQ4’25の17.6%をピークに、Q1’26が16.2%、Q2’26が13.4%と2四半期連続で縮小した。Q3のガイダンスはさらに11.7%まで下がる見通しだ。通期の売上高予想は510億〜514億ドルに絞り込まれ、通期営業利益率は31.5%で据え置かれている。数字自体はQ1時点の見通し(507億〜517億ドル)の範囲に収まっており、驚きはない。それでも成長が3四半期連続で減速しているという事実そのものが、投資家には重く受け止められた形だ。
| Netflix 売上高成長率(前年同期比)の推移 – ピークから3四半期連続で減速 | |||
| ★ピーク 17.6% Q4’25 | 16.2% Q1’26 | 今回 13.4% Q2’26 | 予想 11.7% Q3’26(ガイダンス) |
| 売上成長率はQ4’25の17.6%をピークに、Q1’26→Q2’26→Q3’26ガイダンスと3四半期連続で減速。Q3’26はガイダンス(予想)値。 | |||
| 出典: Netflix Q1/Q2 2026 Shareholder Letter | |||
エンゲージメントを巡る質問も相次いだ。人気シリーズがシーズン2で視聴数を落とす傾向について、決算説明会ではアナリストからの追及が続いた。共同CEOのテッド・サランドスは「シーズン2の落ち込みはむしろ昨年より改善している」と否定したが、視聴時間と収益の関係を問われた共同CEOのグレッグ・ピーターズは「視聴時間と収益・利益の間に線形の関係はない。すべての視聴時間が同じ価値を持つわけではないからだ」と述べている。2026年上半期の総視聴時間は970億時間を超えたというが、時間の量だけでは株価の説明にならないというわけだ。
もう一つ気になる動きがある。会員のエンゲージメント動向を示す「What We Watched」レポートについて、Netflixは公開頻度を2027年第1四半期以降、年1回に減らすと発表した。決算の焦点を売上高や営業利益といった財務指標に絞りたいという説明だが、開示が薄くなること自体を懸念材料と見る向きもあるはずだ。
広告事業の2026年目標は前年比ほぼ倍増の30億ドルで、Q1から変わっていない。新しいのはその実行段階に入ったことだ。米国広告主とのアップフロント商談は「最終段階」にあり、数週間以内の契約締結を見込むという。女子ワールドカップやNFL追加試合、MLB、WWEといったライブスポーツ権利が広告需要を牽引している。ライブ番組はコンテンツ予算の5%超を占める一方、視聴時間に占める比率は約1%にとどまる。少ない視聴時間で大きな広告収益を狙う構造だと言える。
もう一つの注目点は、ワーナー・ブラザース・ディスカバリー買収破談後の姿勢確認だ。CFOのスペンサー・ニューマンは「我々は基本的にビルダーであり、バイヤーではない」と述べ、大型M&Aより自社事業への再投資を優先する方針を改めて示した。Q1決算で焦点になった創業者リード・ヘイスティングスの取締役会退任も踏まえると、経営陣は事業拡大より足元の収益性を重視する局面に入ったと見ていいだろう。
コンテンツ面では、ハーラン・コーベン原作の新作シリーズ「アイ・ウィル・ファインド・ユー」が2026年配信開始作品の中で最多視聴を記録した。アニメ映画「Swapped」は歴代2位の視聴実績に迫っている。
Q1とQ2を通して見えるのは、Netflixが成長率の減速を前提に収益性で株主に応えるフェーズに入ったという構図だ。
売上成長はQ4’25の17.6%をピークに、Q1’26が16.2%、Q2’26が13.4%、Q3’26ガイダンスが11.7%と、四半期を追うごとに減速幅が広がっている。一方で営業利益率はQ2に33.4%まで回復し、ガイダンスを上回った。会員数の四半期開示をやめて久しいNetflixにとって、投資家が確認できる健全性の指標は事実上、売上成長率と利益率の2つに絞られている。今回の株価下落は、利益率が改善しても成長率の減速トレンドを打ち消せなかった結果と見るのが妥当だろう。
広告事業とライブスポーツは、この成長減速を補う次の一手として位置づけられている。30億ドルという2026年目標が達成されても全社売上の6%程度に過ぎないが、アップフロント商談が最終段階に入ったことで、成長率への寄与は今後の四半期でより測りやすくなるはずだ。2026年10月に予定されるQ3決算では、アップフロント商談の成約状況と、11.7%というQ3ガイダンスの成長率が実際にどう着地するかを見ておきたい。
次のQ3決算では、成長減速に歯止めがかかるかどうかが焦点になる。
本記事は以下のニュースソース・一次資料を参考に作成しました。