Alphabet 2026年Q2決算が2026年7月22日(現地時間)に発表されました。売上高は前年比24%増の1,198億ドルと、これで12四半期連続の2桁成長を達成。Google Cloudは前年比82%成長と、前四半期(63%成長)からさらに加速しました。一方で、純利益は前年比294%増という驚異的な数字を叩き出したものの、その大部分は持分証券(保有株式)の評価益によるものです。さらにCFOが2026年通期の設備投資(CapEx)ガイダンスを大幅に引き上げたことを受け、決算内容が好調だったにもかかわらず株価は時間外取引で下落しました。
前四半期(Q1 2026)の決算については、Alphabet 2026年Q1決算レポートで詳しく解説しています。今回のQ2決算は、Q1で見られた「好調な数字の裏にある会計上の注意点」という構図がさらに強まった形です。
本記事では、Alphabet公式の決算リリース・SEC提出資料・Google公式ブログでのCEOコメントを一次情報としつつ、英語圏の主要メディア報道も交えてAlphabet Q2 2026決算を多角的に解説します。
目次
| 指標 | Q2 2026 | Q2 2025 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,198億ドル | 964億ドル | +24%(定数通貨で+23%) |
| 営業利益 | 407.7億ドル | 312.7億ドル | +30% |
| 営業利益率 | 34% | 32% | +2ポイント |
| 純利益(普通株主帰属分) | 1,121億ドル | 282億ドル | +298% |
| EPS(1株当たり利益、希薄化後) | 9.11ドル | 2.31ドル | +294% |
売上高1,198億ドルはAlphabetにとって12四半期連続の2桁成長となり、事業の勢いが継続していることを示しています。営業利益率も34%まで拡大し、収益性の面でも着実な改善が見られます。
ただし、純利益294%増という数字はそのまま鵜呑みにできません。この点は後述します。
| 指標 | Q2 2026 | Q2 2025 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 247.7億ドル | 136.2億ドル | +82% |
| 営業利益 | 88.1億ドル | 28.3億ドル | 約3倍 |
Q1 2026で四半期売上200億ドルを初突破したGoogle Cloudは、Q2でさらに成長を加速。前四半期の63%成長から82%成長へと伸び率そのものが拡大するという、規模が大きくなるほど成長率が鈍化するのが通常の中では異例の展開です。営業利益も約3倍に拡大し、AIインフラ需要の収益化が着実に進んでいることがうかがえます。
| Google Cloud 売上推移(Q2 2025〜Q2 2026) | ||||
| 136.2億ドル Q2 2025 | 156億ドル※ Q3 2025 | 176.6億ドル Q4 2025 | 200.3億ドル Q1 2026 | 247.7億ドル Q2 2026 |
| 前年比+82%(前四半期は+63%)。※Q3 2025は複数メディア報道による推定値。出典: Alphabet決算資料 | ||||
CEOサンダー・ピチャイ氏はGoogle公式ブログでの決算コメントで、Google Cloudの受注残高(バックログ)が5,140億ドルまで拡大したことを明らかにしました。Q1時点の受注残高(4,600億ドル超)からさらに積み上がっており、需要の強さを裏付けています。
ピチャイ氏は「モデルへの需要は開発者・エンタープライズ双方でトークン利用の増加につながっているが、依然として供給制約(supply constrained)の状態にある」と述べ、Q1に続きコンピュートリソース不足が事業拡大のボトルネックであることを認めました。
Gemini関連の指標も好調です:
| セグメント | Q2 2026 | Q2 2025 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| Google Search & other | 632.7億ドル | 541.9億ドル | +17% |
| YouTube ads | 110.6億ドル | 98.0億ドル | +13% |
| Google Network | 73.0億ドル | 73.5億ドル | −0.7% |
| 広告事業 合計 | 816.3億ドル | 713.4億ドル | +14% |
| サブスクリプション・プラットフォーム・デバイス | 129.1億ドル | 112.0億ドル | +15% |
| Google Cloud | 247.7億ドル | 136.2億ドル | +82% |
| Other Bets | 3.8億ドル | 3.7億ドル | +2.4% |
| セグメント別売上成長率(Q2 2026 前年比) | ||
| Google Cloud | +82% | |
| Google Search | +17% | |
| サブスク・プラットフォーム等 | +15% | |
| YouTube広告 | +13% | |
| Google Network | 唯一の減収セグメント | −0.7% |
| バーの長さはGoogle Cloud(+82%)を基準に正規化。Google Networkは唯一の前年割れのため負の値をバッジ表示。出典: Alphabet決算資料 | ||
検索広告売上は前年比17%増の632.7億ドル。ピチャイ氏はブログで「AI Overviews(AIによる概要回答)とAI Modeを1つのシームレスな検索体験に統合した」と明かし、AI機能がもたらす検索クエリの純増効果が続いていることを強調しました。またエンジニアリング・ハードウェア両面の最適化により、AI Modeの応答コストは「ローンチ以来最低水準」に削減されたとしています。
YouTube広告売上は前年比13%増の110.6億ドル。2026年6月から7月にかけて開催されたFIFAワールドカップ2026関連の動画は、世界で17億人超のユニーク視聴者を記録し、YouTube広告の押し上げ要因になったとみられます。
サードパーティー向け広告ネットワーク「Google Network」はQ1に続き前年割れ(−0.7%)。Google自社プロパティへの広告配信優先という構造的トレンドが続いています。
Other Betsの営業損失は前年の12.5億ドルから18.0億ドルへ拡大。Waymoの新型車両「Ojai」(第6世代Waymo Driver搭載)投入や、Wingが累計100万件の配送を完了するなど事業自体は進展していますが、先行投資フェーズが続いています。
Q1決算に続き、Q2でも純利益の急増を額面通りに受け取ることはできません。
決算資料の「Other Income (Expense), Net」の内訳を見ると、持分証券(保有株式)の利得が総額990.3億ドルにのぼっています(Q2 2025は12.9億ドルのみ)。この利得は法人税を219億ドル押し上げた上で、最終的に純利益を771億ドル、希薄化後EPSを6.26ドル押し上げたと決算資料に明記されています(原文:the net effect of the gain on equity securities of $99.0 billion increased the provision for income tax, net income, and diluted net income per common share by $21.9 billion, $77.1 billion, and $6.26, respectively)。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 営業利益 | 407.7億ドル |
| 持分証券の評価益(純額) | 990.3億ドル |
| その他収益・費用 合計 | 979.8億ドル |
| 純利益(報告値) | 1,121.1億ドル |
| 純利益1,121.1億ドルの内訳(Q2 2026) | ||
| ||
| 青: 本業ベース純利益相当(約350.1億ドル)/橙: 持分証券評価益が純利益を押し上げた効果(771億ドル、決算資料の開示額)。評価益の主因はBofA試算ではAnthropic株評価急騰とみられる。 |
つまり、純利益1,121億ドルのうち、事業の実力を示す営業利益は407.7億ドルにとどまり、残りの大部分は保有株式の値上がり益(しかも未実現、つまりまだ現金化していない部分を含む)だということです。
Alphabetの公式発表は評価益の投資先企業名を明示していませんが、Bank of America(BofA)のアナリスト試算によると、この評価益の主要因はAnthropicへの出資評価額の急騰にあるとみられています。BofAの試算では、Anthropicの企業価値評価が約650億ドル規模の資金調達を経て3,800億ドルから9,650億ドルへと上昇し、Alphabetが保有する約14%の持分の帳簿価格がQ1時点の約530億ドルからQ2時点で約1,350億ドルへ、およそ800億ドル増加したとされています。これはQ2の持分証券評価益990億ドルの大部分を占める規模であり、残りは他の非公開株式投資の評価益とみられます。
Q1決算でも同様に、純利益81%増の主因が未実現投資益(約377億ドル)だったことを本サイトのQ1決算記事で解説しましたが、Q2ではこの「見かけ上の利益のかさ上げ」効果がさらに大きくなった形です。事業の実力を測る上では、営業利益(前年比+30%)や後述するGoogle Cloudの成長率で評価するのがより実態に近いというのが、複数のアナリストに共通する見方です。
好調な決算内容にもかかわらず、Alphabet株(GOOGL)は決算発表後の時間外取引で4〜5%下落しました(Bloomberg、TradingViewなど複数メディアが報道)。
その主因は、CFOアナット・アシュケナジ氏が決算説明会で明らかにした2026年通期の設備投資(CapEx)ガイダンスです。前四半期時点のガイダンス1,800億〜1,900億ドルから、1,950億〜2,050億ドルへと再び引き上げられました。アシュケナジ氏は「レンジ引き上げの主因は、拡大する需要に対応するための供給能力導入の加速にある」と説明し、さらに「2027年の設備投資は大幅に増加する見込み」とも言及しています。
| 設備投資(CapEx)の推移 — AI時代への加速投資 | |||||
| 245億ドル 2021 | 313億ドル 2022 | 323億ドル 2023 | 525億ドル 2024 | 914億ドル 2025 | 2,000億ドル(中央値) 2026予想 |
| 2026年通期ガイダンスは1,950億〜2,050億ドル(中央値2,000億ドルで表示、破線枠はガイダンス値であることを示す)。2025年実績914億ドルから約2.2倍。出典: Alphabet決算資料・CFOガイダンス | |||||
Q2単体の設備投資実績は449.2億ドル(前年同期比+100%)で、Google Cloudの売上成長率82%を上回るペースで支出が拡大している計算になります。上半期(1〜6月)累計では806.0億ドルに達し、2025年通期の設備投資914億ドルに迫る規模を、わずか半年で使い切りつつある状況です。
このCapEx拡大についてはアナリストの評価が分かれています。
強気派の代表格であるGuggenheimのアナリスト、マイケル・モリス氏は投資判断「Buy」・目標株価450ドルを維持し、現在の状況を「フルスタックAIリーダーへの魅力的なエントリーポイント」と評価しています。実際、約61人のアナリストのうち大多数がBuy評価を出しており、平均目標株価は約430ドルとされています。
一方、Freedom Capital MarketsのチーフマーケットストラテジストであるJay Woods氏は「ウォール街が求めているのは、AIが単に費用を押し上げているだけでなく、成長を牽引しているという証拠だ」と指摘。設備投資の伸びが売上成長を上回るペースで拡大していることへの懸念を代弁しています。
株価下落は、決算内容そのものへの失望というより、「巨額のAI投資がいつ・どれだけのリターンを生むのか」という市場の見極めムードを反映したものと言えそうです。
Q1 2026とQ2 2026を比較すると、Alphabetの「好調と支出拡大が同時に加速する」構図がより鮮明になります。
| 指標 | Q1 2026 | Q2 2026 | 推移 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,099億ドル | 1,198億ドル | 加速(伸び率+22%→+24%) |
| Google Cloud成長率 | 63% | 82% | さらに加速 |
| Google Cloud受注残高 | 4,600億ドル超 | 5,140億ドル | 積み上がり継続 |
| CapEx(四半期実績) | ― | 449.2億ドル | 前年比+100% |
| EPS(前年比) | +81% | +294% | かさ上げ効果が拡大 |
| 2026年通期CapExガイダンス | 1,800〜1,900億ドル | 1,950〜2,050億ドル | 上方修正 |
Q1の時点で「コンピュートリソース不足という贅沢な悩み」と評した状況は、Q2でさらに強まりました。Cloud事業の成長率そのものが加速する一方、それを支える設備投資も加速し、両者のせめぎ合いが株価の反応にも表れた四半期だったと言えます。
Alphabet 2026年Q2決算のポイントを整理します:
Q1決算で見えていた「需要に供給が追いつかない」という状況は、Q2ではより先鋭化しました。Google Cloudの成長率そのものが加速する一方で、それを支えるための投資も加速し続けており、市場は「このAI投資がいつリターンとして跳ね返ってくるか」を見極めようとしています。次のQ3決算では、CapExの増加ペースがGoogle Cloudの収益成長・利益率にどう転化しているかが最大の焦点になりそうです。