リテールメディアが「成熟期」を迎える2026年 – 日米市場比較で見る次の一手

「リテールメディアに投資すべきか?」——この問いに対する答えは、もはや「Yes」一択です。

📌 関連記事: 米国市場の詳細は前回記事「リテールメディア2026:693億ドル市場と店内メディアの激戦」をご覧ください。本記事では日本市場との比較を中心に解説します。

しかし2026年、より重要な問いは「どこに、どのように投資すべきか?」へと移っています。米国ではWalmartやKrogerが店舗内スクリーンを急拡大し、日本でもCARTA HOLDINGSの最新調査が市場の2倍以上の成長を予測。リテールメディアは「爆発的成長期」から「成熟期」へと移行しつつあります。

この記事では、以下のポイントを解説します:

  • 日米リテールメディア市場の規模と成長率の比較
  • 2026年の3大トレンド:店舗内メディア、オフサイト拡大、AI活用
  • 小規模ネットワークの統合・淘汰の動き
  • 日本市場の特徴と、マーケターが取るべきアクション

リテールメディアとは?2026年の市場概況

リテールメディアとは、小売業者が保有するファーストパーティデータ(購買データ)を活用し、自社のECサイトや店舗で広告を配信する仕組みです。広告主にとっては「実際に購入した人」のデータに基づくターゲティングが可能なため、従来のデジタル広告より高い効果測定が期待できます。

2026年、この市場は世界的に急成長を続けています。

米国市場:693億ドル規模へ

eMarketerによると、米国のオムニチャネルリテールメディア広告費は2026年に693億3,000万ドル(前年比17.9%増)に達する見込みです。これはTV広告費を初めて上回る歴史的なマイルストーンとなります。

WPPの予測では、コマースメディア(リテールメディアを含む広義の概念)は2025年時点で総広告収入の15.6%(約1,782億ドル)を占めており、成長の勢いは衰えていません。

日本市場:6,066億円から1兆3,174億円へ

CARTA HOLDINGSが2026年1月27日に発表した調査によると、日本のリテールメディア広告市場は以下のように推移すると予測されています。

日本リテールメディア広告市場規模の推移(予測)
2024年
4,700億円
2025年
6,066億円
2026年
(予測)
2027年
(予測)
2029年
約2.2倍
1兆3,174億円
出典: CARTA HOLDINGS「リテールメディア広告市場調査」(2026年1月)

2025年の内訳を見ると:

  • EC事業者: 5,236億円(全体の86%)
  • 店舗事業者: 830億円(デジタル広告620億円+デジタルサイネージ210億円)

特筆すべきは店舗事業者の成長率です。2029年には2025年比約2.3倍の1,939億円に達すると予測されており、ECに次ぐ成長領域として注目されています。


日米リテールメディア市場の比較

日米の市場を比較すると、規模だけでなく構造的な違いが見えてきます。

日米リテールメディア市場の比較(2025-2026年)
比較項目 🇺🇸 米国 🇯🇵 日本
市場規模(2025年) 約590億ドル
(約8.8兆円)
6,066億円
成長率(2026年) +17.9% +29%(前年比)
主要プレイヤー Amazon, Walmart,
Kroger, Instacart
楽天, Amazon Japan,
イオン, セブン&アイ
成熟度 成熟期
統合・淘汰フェーズ
成長期
組織化・基盤整備中
注力領域 オフサイト拡大
店舗内メディア
EC強化
データ基盤整備
出典: eMarketer, CARTA HOLDINGS, Marketing Brew等より筆者作成

日本市場の成長率(前年比29%)は米国を上回っており、キャッチアップフェーズにあると言えます。一方で、米国では既に「次の成長領域」としてオフサイトや店舗内への投資が進んでおり、日本はこの動きを先取りする好機にあります。


2026年の3大トレンド

1. 店舗内リテールメディアの激戦化

2026年、店舗内メディアが最大の戦場になりつつあります。

“In-store retail media will intensify as a battleground for top CPG retailers.”
— Andrew Lipsman, The Drum

米国では、Krogerが2026年にスクリーン展開を積極的に進め、Albertsonsも追随しています。店内のデジタルサイネージは、購買直前の「ラストワンマイル」で消費者にリーチできる強力なタッチポイントです。

日本市場でも、CARTA HOLDINGSの調査によると店舗事業者のデジタルサイネージ市場は210億円(2025年)。この数字は控えめに見えますが、DX進展に伴うデータ資産の収益化が進めば急拡大する可能性があります。

2. オフサイト広告が主要収益源に

従来のリテールメディアは「自社サイト内の広告枠」が中心でしたが、2026年はオフサイトが主戦場になります。

Marketing Brewの専門家予測によれば:

“For many retailers, 2026 will also be the year that offsite becomes the primary revenue driver.”

オフサイト広告とは、小売業者の購買データを活用しながら、外部のメディア(CTV、ディスプレイ、ソーシャル等)に広告を配信する手法です。Walmartは既にDisneyと提携し、Walmartのオーディエンスセグメントを使ってDisneyのストリーミングサービスで広告を配信しています。

この動きの背景には、上位ファネル(認知・興味)への拡大があります。リテールメディアが「購買直前のラストクリック」だけでなく、ブランド構築にも貢献できることを示すことで、より多くの広告予算を獲得しようとしているのです。

3. AIがリテールメディア運用を自動化

“The early 2020s brought endless conversation about AI, but 2026 is shaping up to be the year AI actually runs retail media.”
— Marketing Brew

2026年、AIはリテールメディアにおいて「話題」から「実装」へと移行しています。

具体的には:

  • クリエイティブ自動生成: 商品画像から広告バナーを自動生成
  • 入札最適化: 購買確率に基づくリアルタイム入札調整
  • レコメンデーション: 消費者のAIアシスタントに商品を推薦させる

特に注目すべきは最後の点です。消費者がAIアシスタント(ChatGPT、Gemini等)に「おすすめのシャンプーを教えて」と聞く時代には、「クリックを勝ち取る」から「AIに推薦されることを勝ち取る」へと戦略が変わります。


小規模ネットワークの統合・淘汰

2026年のもう一つの重要な動きは、リテールメディアネットワーク(RMN)の統合・淘汰です。

過去数年間、InstacartからTarget、Walmartまで、無数のリテールメディアネットワークが誕生しました。しかし、多くの小規模ネットワークは規模と効果の両面で投資に見合わないことが明らかになりつつあります。

2026年のリテールメディア広告チャネル成長率予測
コマースメディア
+16%
ソーシャルメディア
+15%
検索広告
+8%
オープンインターネット
(プログラマティック)
+4.4%
出典: Madison & Wall予測(2026年)

コマースメディア(+16%)はソーシャルや検索を上回る成長を見せていますが、その恩恵を受けるのは規模のあるネットワークに限られます。

また、Walmartとの独占契約終了も象徴的な出来事です。Walmartは4年間続けてきたThe Trade Deskとの独占DSP契約を終了し、複数のプラットフォームとの提携に切り替えました。これは大手リテーラーが「囲い込み」から「オープン化」へと戦略を転換していることを示しています。


分析・考察:だから何が起きるのか?

複数ソースの横断分析

米国と日本の動向を比較すると、いくつかの共通点と相違点が浮かび上がります。

共通点

  • 購買データに基づく広告効果の可視化が評価されている
  • マーケティング部門からの予算投資が本格化
  • AI活用による運用効率化への期待

相違点

  • 米国は「成熟期」で統合・淘汰、日本は「成長期」で基盤整備中
  • 米国はオフサイト・店舗内に注力、日本はEC中心
  • 米国は大手による寡占化、日本はまだ群雄割拠

So What?(だから何なのか)

1. 日本市場は「2〜3年後の米国」を先取りできる

米国で起きているオフサイト拡大、店舗内メディア強化、小規模ネットワークの淘汰は、日本でも必ず起きます。今から準備を始めた企業が、2028〜2029年の成熟期に優位なポジションを取れるでしょう。

2. 店舗事業者にとって「今」が参入タイミング

CARTA HOLDINGSの調査が示すように、店舗事業者のリテールメディアは2029年までに2.3倍に成長します。先行投資でデータ基盤と組織体制を整えた企業が、この成長を取り込めます。

3. 「ネットワーク参加」から「自社構築」の判断が必要

小規模ネットワークの統合・淘汰を踏まえると、中途半端な規模での参入はリスクです。大手ネットワークへの参加独自の強みを活かした自社構築か、明確な戦略が求められます。


日本企業が取るべき4つのアクション

日本企業が取るべき4つのアクション
[1] データ基盤の整備を最優先に
└─ 購買データの統合・クレンジング、CDPの導入検討
[2] オフサイト広告の実験を開始
└─ 自社データを活用した外部メディア配信のPoC
[3] 店舗内メディアの投資判断
└─ デジタルサイネージの費用対効果検証、パイロット実施
[4] AI活用の組織体制構築
└─ 運用自動化ツールの選定、社内人材の育成

まとめ

2026年、リテールメディアは「爆発的成長期」から「成熟期」へと移行しつつあります。

  • 米国市場は693億ドル規模に達し、TV広告費を初めて上回る
  • 日本市場は6,066億円、2029年には1兆3,174億円へと2.2倍に成長予測
  • 店舗内メディア、オフサイト拡大、AI活用が2026年の3大トレンド
  • 小規模ネットワークは統合・淘汰され、規模の経済が効く市場へ
  • 日本企業は今からデータ基盤とオフサイト実験を始めることで先行者優位を獲得できる

リテールメディアへの投資は「するかしないか」ではなく、「どこに、どのように」の時代です。米国の動向を参考にしながら、日本市場の成長を取り込む戦略を今すぐ検討しましょう。


参考記事

本記事は以下のニュースソースを参考に作成しました。

主要ソース

関連資料

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