「テレビ広告の効果測定ができない」——そんな常識が、2026年の米国では過去のものになりつつあります。
2026年2月現在、米国のCTV(コネクテッドTV)広告市場は380億ドル(約5.7兆円)に達し、前年比14%の成長を記録しています。一方、日本市場は約7億ドル(約1,050億円)にとどまり、その差は実に54倍。なぜこれほどの開きが生まれているのでしょうか。
この記事では、以下のポイントを解説します:
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2026年、米国ではCTV広告がついに「パフォーマンスメディア」として認知されるようになりました。これまでテレビ広告はブランディング目的が主流でしたが、今やマーケターはCTVに対してROIの可視化、インクリメンタリティ(増分効果)、CRM・POSデータとの連携を当然のように求めています。
eMarketerの調査によれば、ストリーミング視聴は米国の映像視聴全体の60%以上を占めるまでに成長。主要ストリーミングサービスがプログラマティック広告を全面的に受け入れたことで、精密なターゲティングとリアルタイム最適化が可能になっています。
2026年1月のCESで、Amazon Adsが発表したインタラクティブ動画広告のベストプラクティスが業界の注目を集めました。
「シンプルさが鍵。視聴者は『カートに追加』のような、すぐに完了できる体験を好む」
— Maggie Zhang, Amazon Ads
CTV広告におけるインタラクティブ要素の効果は数字にも表れています:
また、インタラクティブ広告はブランド想起を36%向上させ、来店トラフィックを13%増加させるというデータも報告されています。
米国では、無料で視聴できる広告付きストリーミングサービス(FAST)が急成長しています。調査によれば、CTV視聴者の69%がサブスクリプションのみのサービスよりもFASTチャンネルを好むと回答。FAST市場は前年比55%増という驚異的な成長を遂げています。
さらに、Amazon、Netflix、YouTube、Peacockへのライブスポーツの移行により、スポーツ広告も「ストリーミングファースト」の時代に突入しています。
日本のCTV広告市場は、2021年の344億円から2025年には約1,695億円に成長したと推計されています。2026年もこの成長トレンドは続くと見られますが、米国との差は依然として大きいままです。
総務省「情報通信白書2025」によれば、日本のテレビのインターネット接続率は51%に達しています。しかし、実際の視聴行動を見ると:
| 指標 | 日本 | 米国 |
|---|---|---|
| 放送波経由の視聴時間 | 128分/日(約70%) | 少数派に |
| ネット経由の視聴時間 | 53分/日(約30%) | 60%以上 |
| CTVデバイス所有率 | 7.6% | 高い普及率 |
| スマホ所有率(16-64歳) | 83% | 同程度 |
日本では、OTT(ネット経由の動画視聴)はあっても、それがスマートフォン経由であることが多く、リビングの大画面テレビでの視聴習慣が米国ほど定着していません。
日本は世界でも有数のモバイルファースト市場です。16〜64歳のスマートフォン所有率は83%に達する一方、CTVストリーミングデバイスの所有率はわずか7.6%。動画視聴もスマートフォンが主戦場であり、「リビングのテレビで広告付きストリーミングを見る」という行動様式が根付いていません。
日本では依然として地上波テレビの視聴時間が映像視聴全体の約70%を占めています。テレビ局と広告代理店の長年の取引関係、スポット・タイム広告の商習慣が根強く残っており、プログラマティックなCTV広告への移行が進みにくい構造があります。
皮肉なことに、日本の若者のテレビ離れがCTV普及を阻害している側面があります。29歳以下のテレビ所有率は69%まで低下しており、そもそもテレビを持たない層は、CTVにも移行しません。彼らはスマートフォンで完結する視聴スタイルを選んでいます。
米国ではクロスデバイス測定やアトリビューションの標準化が進んでいますが、日本ではまだ発展途上です。広告効果の可視化が難しいため、広告主がCTV広告に予算を振り向けるインセンティブが弱くなっています。
また、日本独特の広告代理店システムも影響しています。従来のテレビ広告取引に最適化された組織構造が、デジタル・プログラマティックへの移行を遅らせている面があります。
米国ではNetflix、Amazon Prime Video、Disney+などのグローバルプラットフォームが広告付きプランを積極展開しています。一方、日本ではTVer(民放公式)、ABEMA、各局の独自サービスとグローバルサービスが併存し、統一的なCTV広告市場が形成されにくい状況です。
悲観的な材料ばかりではありません。Media Partners Asiaの予測では、2029年までに日本のCTV普及率は85〜90%に達するとされています。また、Magniteの調査では、日本のテレビ視聴者の71%が広告付きストリーミングサービスを視聴しており、そのうち78%が広告を信頼していると回答しています。
日本のCTV広告市場が米国に追いつくことは難しいかもしれません。しかし、日本独自の視聴環境を理解し、モバイルとCTVを統合した戦略を構築することで、この成長市場の恩恵を受けることは可能です。