売上・利益ともにウォール街の予想を大幅に上回りながら、株価は時間外で9%沈んだ。
2026年4月16日、Netflixが発表した2026年第1四半期(1-3月期)決算は、一見すると文句なしの内容だった。売上高は前年同期比16%増の125億ドル。1株当たり利益(EPS)は1.23ドルと、アナリスト予想の0.76ドルを62%上回った。純利益は52.8億ドルに達し、前年同期比83%増を記録している。
それでも株価は下がった。何が起きたのか。
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まず、Q1の好業績を正確に把握しておこう。
主要財務指標
| 指標 | 実績 | 市場予想 | 乖離 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 125億ドル | 121.8億ドル | +2.6% |
| EPS | 1.23ドル | 0.76ドル | +62% |
| 純利益 | 52.8億ドル | — | 前年比+83% |
| フリーキャッシュフロー | 51億ドル | — | — |
| 営業利益率 | 32%超 | — | — |
12四半期連続の増益。地域別でも全セグメントが2桁成長を達成した。米国・カナダが52億ドル(+14%)、欧州・中東・アフリカが40億ドル(+17%)、中南米が15億ドル(+19%)、アジア太平洋が20%増と、特に新興地域の伸びが際立つ。
加入者数も好調だ。Netflixは2025年Q1から四半期ごとの加入者数開示をやめたが、今期の純増は推定930万人。アナリスト予想の456万人を大きく上回った。日本ではワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の配信が過去最高視聴を記録し、1日あたりの新規加入者数が歴代最多を更新している。
投資家が最も嫌うのは、成長減速のシグナルだ。
Netflixが示した第2四半期(Q2)のガイダンスは、売上高126億ドル(成長率13%)、EPS 0.78ドル。売上は堅調に見えるが、問題はEPSだった。ウォール街のコンセンサス予想0.84ドルを下回り、営業利益率も1.5ポイントの低下が見込まれている。
Q1の16%成長からQ2は13%へ鈍化する見通しも、市場の警戒感を高めた。2026年通期の売上ガイダンスは507億〜517億ドル(12〜14%成長)で据え置き。数字自体は悪くないが、Q1の勢いがそのまま続くわけではないと経営陣が認めた格好だ。
決算と同時に、もう一つのサプライズが飛び込んだ。
共同創業者でありボード議長のリード・ヘイスティングスが、2026年6月に取締役会を退任すると発表した。29年間にわたりNetflixを率いてきた人物の退場は、象徴的な意味が大きい。
ヘイスティングス自身は「Netflixは私の人生を変えた。今は慈善活動など新しいことに集中したい」とコメント。共同CEO(最高経営責任者)のテッド・サランドスとグレッグ・ピーターズの経営体制に変更はないが、創業者の離脱が投資家心理に影を落としたのは間違いない。
サランドスは、退任がワーナー・ブラザーズ買収の失敗とは無関係であると強調している。
2026年のコンテンツ予算は200億ドル。前年比10%増だ。ワーナー・ブラザーズとの取引不成立による違約金28億ドルも、コンテンツ強化と広告基盤の改善に充てる方針を示した。
投資拡大はサービスの競争力維持に不可欠だが、短期的には利益率を圧迫する。通期の営業利益率ガイダンスが31.5%にとどまる背景には、このコンテンツ投資の膨張がある。
株価下落の陰に隠れがちだが、広告事業は着実に規模を拡大している。
広告付きプランの加入者は7,000万人超に到達。月間アクティブ視聴者(MAV)は1億9,000万人を超えた。新規加入者の過半数が広告付きプランを選択する市場も出てきている。
2025年の広告売上は15億ドルで、前年の約2.5倍。2026年はこれを30億ドルに倍増させる目標を掲げる。自社開発の広告プラットフォームは業界ベンチマークを75%上回るパフォーマンスを記録しており、AmazonやYahooとの新たなパートナーシップも広告収入の拡大を後押しする。
| 広告事業指標 | 数値 |
|---|---|
| 広告付きプラン加入者数 | 7,000万人超 |
| 月間アクティブ視聴者(MAV) | 1億9,000万人 |
| 2025年広告売上 | 15億ドル(前年比2.5倍) |
| 2026年目標 | 30億ドル |
| 広告プラットフォーム性能 | 業界ベンチマーク比+75% |
ストリーミング業界で広告モデルへの移行が加速するなか、Netflixの広告事業は後発ながらも急速にスケールしている。Disney+やAmazon Prime Videoとの差別化要因として、今後さらに存在感を増すだろう。
株価急落にもかかわらず、アナリストの見方は総じてポジティブだ。追跡対象15社のうち12社がBuy(買い)評価を維持している。
主要アナリストの動向(決算前後)
| 証券会社 | 評価 | 目標株価 |
|---|---|---|
| Guggenheim | Buy | $130 |
| Goldman Sachs | Buy(Neutralから引上げ) | $120 |
| MoffettNathanson | Buy | $120 |
| Wedbush | Outperform | $118 |
| KeyBanc | Overweight | $115 |
| Morgan Stanley | Overweight | $115 |
Morgan Stanleyのショーン・ディフリーは今回の下落を「魅力的なエントリーポイント」と評し、Wedbushのアリシア・リースはWB違約金28億ドルがコンテンツと広告強化に使われる点を好材料に挙げた。Bank of Americaのジェシカ・ライフ・エーリッヒは「値上げできる力こそが強さの証拠」と指摘している。
2026年のWBC配信は、Netflixにとって歴史的な成功だった。視聴者数3,140万人は日本におけるNetflix史上最多。この配信がきっかけとなり、日本では1日あたりの新規加入者数が過去最高を記録した。ライブスポーツコンテンツの威力を証明した形だ。
2026年4月28日に、8歳未満の子ども向けゲームアプリ「Netflix Playground」をローンチする。ペッパピッグやセサミストリートのキャラクターを使った広告なしのスタンドアロンアプリだ。ゲーム事業を「キッズ」「ナラティブ」「パーティー/パズル」「メインストリーム」の4領域に絞り込み、1,500億ドル規模のゲーム市場(中国・ロシア除く)を狙う。
1. 広告事業が収益構造を変える
2026年の広告売上目標30億ドルは、まだ全体売上の6%程度にすぎない。だが成長率は年2倍超のペースで、2028年には100億ドル規模に達する可能性がある。広告事業がサブスクリプション収入と並ぶ柱になれば、Netflixの収益モデルは根本的に変わる。広告主にとっても、1億9,000万人のMAVを持つプラットフォームは無視できない存在だ。
2. ヘイスティングス退任後のガバナンス
サランドスとピーターズの共同CEO体制はすでに実質的な経営を担っている。ヘイスティングスの退任は象徴的だが、実務への影響は限定的だろう。ただし、創業者不在の取締役会が大胆な投資判断を続けられるかは、中長期的に注視すべきポイントだ。
3. 投資家が注目すべき指標
四半期加入者数の開示をやめたNetflixでは、今後は広告事業の売上成長率と営業利益率がファンダメンタルの健全性を測る主要指標になる。Q2ガイダンスの営業利益率1.5ポイント低下が一時的なものか構造的なものかを、次の決算で見極めたい。
好決算と株価下落が同居する現象は、市場がNetflixに求める期待値の高さの裏返しでもある。次のQ2決算(2026年7月予定)で、ガイダンスに対する実績がどう着地するかが、株価回復の鍵を握るだろう。
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