AIに広告予算の配分まで任せられるかと聞かれたら、あなたはどう答えるだろうか。
2026年6月10日にDigidayが公開した調査記事が、この問いへの業界の本音を映し出した。マーケターはソーシャルやリテールメディアでAIを使い込んでいる。それでも、AI広告買付(広告枠の買い付け判断をAIに任せること)には慎重なままだ。同じ週に出たクリエイティブ審査の現場報告と測定指標への問題提起を重ねると、2026年のAI広告に引かれつつある信頼の境界線が見えてくる。
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Digiday+ Researchが2026年第1四半期に100名超のマーケティング専門家を対象に実施した調査によると、ソーシャルメディアキャンペーンでAIを使うマーケターは49%、リテールメディアでは42%にのぼる。10人に4人以上が、すでに実務でAIを回している計算だ。
数字だけ見れば順調な普及である。だが同記事は、どこでAIを使い、どこで使わないかの線引きは単純ではなく、多くの場合「信頼」の問題に行き着くと指摘する。タイトルが示すとおり、AI広告買付に対してマーケターは懐疑的な姿勢を崩していない。実行作業は任せても、お金の流れを決める判断は手放さない。この温度差が2026年のAI広告の現在地だろう。
なお、同調査の詳細データはDigiday+会員限定のため、本稿では公開部分に基づいて解説している。
買付と並んでAIへの委任が疑問視されているのが、アイデアの領域だ。AdNewsが2026年6月10日に報じたYoung Lions 2026の審査では、200名超の業界リーダーが応募作を審査した結果、AI頼みの応募作とそうでない作品がはっきり分かれたという。
審査員を務めたCocogunのクリエイティブパートナーAnt Melder氏は、AIでアイデアを出した応募作は最も汎用的で予想どおりの内容であり、審査で上位に残らなかったと振り返る。Cummins&Partnersのナショナル・ヘッド・オブ・ストラテジーを務めるTim Collier氏の言葉はさらに辛辣だ。
AIは期待の機械だ。広告は予想外のものを生み出す仕事であり、AIはほとんどの場合ブリーフに答えられない。
Tim Collier氏(Cummins&Partners)、AdNewsの取材より
Collier氏は競合プレゼンのリスクにも触れている。8社が同じ案件を競う場で、わずかでもAI由来のアイデアを使えば、他社とまったく同じ案がぶつかる可能性が高いという指摘だ。
国際的な前例もある。2025年のCannes Lionsでは、ブラジルの代理店DM9がWhirlpoolのConsulブランド向け作品でAI加工映像の使用を認め、Creative Data Grand Prixを含む計12のライオンを返還した。これを受けてCannes Lionsは、透明性、開示、倫理的境界の指針となるAI Integrity Handbookを公開し、2026年の応募には応募企業とブランド側シニアマーケターの双方による事実確認の承認を必須化している。
ACAのCEOであるTony Hale氏は、生成AIはクリエイティブの過程で大いに役立つツールだが、人間の創造性に置き換わることはないと語る。AIの使用自体はYoung Lionsの豪州・国際の両競技で認められている。問われているのは使うかどうかではなく、思考まで外注するかどうかだ。
AI活用の成果を測る指標そのものにも疑問符が付き始めた。Search Engine Landが2026年6月8日に公開したDan Taylor氏(SALT.agency テクニカルSEO責任者)の論考は、ベンダー各社が売り込むAI share of voice、つまりChatGPTやGemini、Claude、Perplexityといった生成AI上でのブランド可視性スコアの構造的な欠陥を指摘する。
従来の検索順位は、固定されたキーワードリストという監査可能な分母に基づいていた。一方、生成AIに投げられるプロンプトは事実上無限にあり、ベンダーは恣意的に選んだごく一部のプロンプトでスコアを算出しているにすぎない。Taylor氏はこれを隠れた分母の問題と呼ぶ。
| 従来の検索SOV vs AI share of voice | ||
| 比較項目 | 従来の検索SOV | AI share of voice |
| 分母 | 固定キーワードリスト(既知) | 無限のプロンプト空間(未知) |
| 計測方法 | 静的な検索結果の順位 | ベンダーが選んだ一部プロンプトの出力 |
| 監査可能性 | 監査可能 | ブラックボックス |
| 出典: Dan Taylor(SALT.agency)、Search Engine Land 2026年6月8日掲載論考 | ||
象徴的な事例が2025年9月のChatGPT 5.0アップデートだ。モデル更新によって外部への引用リンクの表示が全体的に減った結果、計測ダッシュボード上の可視性スコアは急落した。ブランドの実力やマーケティング戦略の失敗とは無関係の、表示仕様の変更によるスコア低下である。
Taylor氏は代替として3つの指標を挙げる。ブランドが自然に言及される頻度を見る言及シェア、AIに相談した際に自社製品が推奨される頻度を見る推薦シェア、そしてブランドがどんな形容で語られるかを見るナラティブシェアだ。いずれも厳密な数値ではなく、方向性を示すシグナルとして扱うべきだという。
3本の記事に共通するのは、AIを使うかどうかではなく、どこまで任せるかという問いだ。筆者は、2026年後半の論点は「AI活用率」から委任範囲の設計に移ると見ている。
1. だから何が起きるのか
入札調整やクリエイティブ量産、レポーティングといった実行レイヤーのAI化は今後も進むだろう。Digiday調査でソーシャル49%という数字が出た以上、この流れは止まらない。一方で、予算配分や媒体選定といった意思決定レイヤーは、判断根拠を説明できる仕組みを示したプラットフォームだけが任される構図に向かう。測定面では、単一スコアへの依存が見直され、言及・推薦・ナラティブのような複数指標の併用が広がるはずだ。
2. だから読者は何をすべきか
| 2026年後半に向けた3つのアクション | |||
| [1] AI活用箇所を「実行」と「意思決定」に分類する
[2] AI可視性ツールのスコア算出方法をベンダーに確認する
[3] クリエイティブAI使用の社内ルールと開示基準を文書化する
|
AIをどこで使い、どこで止めるか。その線引きを文書化しているかどうかが、2026年後半の広告運用の差になっていく。
本記事は以下のニュースソースを参考に作成しました。