広告の効果測定に自信を持てていますか?
2026年2月2日、IAB(Interactive Advertising Bureau)のCEO David Cohen氏が、広告およびマーケティングの測定を根本的に近代化する業界横断イニシアチブ 「Project Eidos(プロジェクト・エイドス)」 を発表しました。IAB Annual Leadership Meeting(ALM)2026の場で披露されたこの取り組みは、測定の断片化によって業界が被る年間90億ドル以上の損失に正面から挑むものです。
この記事では、以下のポイントを解説します:
Project Eidosは、IABが主導する多年にわたる包括的な測定近代化プロジェクトです。「Eidos(エイドス)」はギリシャ語の動詞「見る」に由来しており、現代のメディア測定に明確さ・一貫性・信頼性をもたらすことを目指しています。
重要なのは、Project Eidosが完全に新しい取り組みというわけではない点です。IABが既に進めていたリテールメディアの標準化やMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)の改善など、複数の測定プログラムを一つの傘の下に統合(ハーモナイズ)するものです。
“高度な測定は業界全体で広く使われていますが、その本質的な約束を果たせていません。単一チャネルの修正や一度きりのフレームワークの時代は終わりました。何年も測定を静かに蝕んできた根本的な問題に取り組む時が来たのです。”
— David Cohen, IAB CEO
Amazon Ads、Google、Meta、The Trade Desk、TikTok、Unilever、WPP Mediaなど30社以上のマーケティング企業が参加し、2026年1月にはMeasurement Advisory Committee(測定諮問委員会)も発足しています。
Project Eidosの緊急性を裏付けるのが、同時に発表された「State of Data 2026: The AI-Powered Measurement Transformation」レポートです。400人以上のブランド・エージェンシーのシニア意思決定者を対象にした調査から、衝撃的な実態が浮かび上がりました。
| 指標 | 数値 | 意味 |
|---|---|---|
| 年間損失額 | 90億ドル以上 | 定義・API・データ入力の不一致による |
| 不満足率 | 60-75% | バイサイドが厳密性・信頼性で不十分と回答 |
| MMMの課題 | 0% | 全有料チャネルがMMMに反映されていると回答した企業はゼロ |
| 潜在価値(メディア投資) | 263億ドル | AI活用の測定改善で解放可能 |
| 潜在価値(生産性) | 62億ドル | 手作業のデータ正規化・同期が自動化可能 |
出典: IAB State of Data 2026 / Project Eidos発表資料
特に注目すべきは、損失の多くが人間によるデータの手動正規化・同期作業に費やされている点です。チャネルごとにバラバラな定義やデータフォーマットが存在し、それを手作業でつなぎ合わせるコストが膨大になっています。
本イニシアチブは、以下の3つの柱で測定の近代化に取り組みます。
チャネルごとにバラバラだった分類体系、データフロー、定義を統一し、エコシステム全体が「同じ測定言語」を話せるようにします。これにより相互運用可能なシステムの構築が可能になります。
各プラットフォームによって指標がバラバラだったり同じ「インプレッション」でも微妙に定義が違ったり、色々ありますよね。
広告の露出から成果への接続を統一的かつ柔軟なアプローチで実現します。チャネル横断で一貫したアトリビューションとインクリメンタリティ測定を可能にすることが目標です。
標準化されたプライバシー対応のインプットに基づく、現代的で比較可能なMMMアプローチを確立します。一貫したROIシグナル、実行可能な予算ガイダンス、チャネル横断の比較を実現し、2026年後半にはMMMプロダクトに投入される用語やデータ入力の標準化が開始される予定です。
| 重点領域 | 解決する課題 | 期待される成果 |
|---|---|---|
| 統一と調和 | 定義・分類のバラバラ | 共通言語・相互運用性 |
| クロスチャネル成果 | チャネル別サイロ測定 | 統一的アトリビューション |
| MMM近代化 | インプットの非標準 | 比較可能なROI・予算最適化 |
出典: IAB Project Eidos発表資料を基に作成
本イニシアチブの背景には、AIの急速な浸透があります。IABの調査によると、バイサイドの約半数が既にAIを測定フレームワークにスケーリングしており、まだの企業も70%以上が1-2年以内に導入予定と回答しています。
しかし、AIには大きなリスクも伴います。
AIがもたらす可能性:
AIが抱えるリスク:
つまり、AIは測定を劇的に改善する力を持ちながらも、基盤が整っていなければ問題をさらに悪化させる可能性があるのです。同プロジェクトが「まずは基盤(定義・データ・標準)を整える」ことに注力しているのは、この認識に基づいています。
AdExchangerが指摘するように、Eidosの本質は「新しい何か」ではなく、既存の測定イニシアチブを統合する点にあります。リテールメディアの標準化、MMMの改善、クロスチャネル測定など、個別に進んでいたプロジェクトを一つのビジョンの下にまとめることで、業界全体での整合性を高める狙いです。
Marketing Diveは「相互運用可能なメディア測定の標準化」という切り口で報じており、これは単なる技術的な改善ではなく、業界のインフラストラクチャそのものの再構築であることを示唆しています。
短期的(2026年後半): MMMの用語・データ入力の標準化が始まり、MMMベンダー間での比較がしやすくなります。クロスプラットフォーム測定の採用率は既に72%(前年64%)に達しており、標準化への需要は高まる一方です。
中期的(2027-2028年): 標準化されたデータフローにAIが組み合わされることで、リアルタイムに近い測定と最適化が現実的になります。現在手作業で行われているデータの正規化作業が大幅に自動化され、コスト削減と精度向上が同時に実現する可能性があります。
デジタル広告の測定は長年「壊れている」と言われてきました。Project Eidosが掲げる「業界全体で同じ測定言語を話す」というビジョンは壮大ですが、Google、Meta、Amazon Adsといった競合企業までもが参加しているという事実が、この課題の深刻さと変革への本気度を物語っています。
本記事は以下のニュースソースを参考に作成しました。