IAB Tech LabがAIエージェントの公開台帳を始動 – AAMP Agent Registryの全容

AIエージェントが広告を買い、AIエージェントが広告を売る。そんな未来は、もう目の前にある。

だが、取引相手のエージェントが何者で、何ができるのかを誰がどう保証するのか。2026年3月4日、IAB Tech Lab CEOのAnthony Katsurが発表したIAB Tech Lab Agent Registryは、この問いに対する業界初の回答だ。AAMP(Agentic Advertising Management Protocols)の信頼レイヤーとして、広告業界のAIエージェントに透明性をもたらす公開台帳が動き出した。


関連記事
AdCP(Ad Context Protocol)とは?AI時代の広告取引を変革する新標準を解説
IAB Tech Lab Agentic AI Roadmapウェビナー|デジタル広告の自動化時代が本格始動
ARTF(Agentic RTB Framework)とは?gRPC×コンテナで実現する次世代広告取引の技術仕様を解説

ads.txtの次はエージェントの身分証明

プログラマティック広告には、取引相手の正当性を担保する仕組みがすでにある。セル側にはads.txtとsellers.json、バイ側にはbuyers.jsonとDemandChain。これらは人間が運営するプラットフォーム同士の取引を前提に設計された。

AIエージェントが自律的に広告取引を実行する世界では、この前提が崩れる。エージェントの所属企業、対応プロトコル、成熟度を第三者が検証できなければ、不正やミスマッチが横行しかねない。

Agent Registryは、この課題を解決するために設計された公開台帳だ。IAB Tech Lab Tools Portal上で無料で利用でき、メンバー・非メンバーを問わず登録できる。


IAB Tech Labのエージェント戦略の全体像については、「IAB Tech Lab Agentic AI Roadmapウェビナー|デジタル広告の自動化時代が本格始動」で詳しく解説しています。

Agent Registryで何ができるのか

登録企業は、自社のエージェントについて以下の情報を定義・公開する。

  • エージェントのカテゴリ:DSP、Identity Resolution、Measurement & Attribution、CDP、Consent Managementなど、IAB Tech Labが定義したカテゴリから選択
  • 対応プロトコル:MCPとA2Aの両方に対応
  • 目的と成熟度:エージェントの用途と開発段階を明記

登録時には企業のGPP IDが紐づけられ、IAB TCFのGlobal Vendor List IDで検証される。IAB Tech Labが各エントリをレビューし、必要な検証情報がそろっているかを確認する仕組みだ。

閲覧側は、カテゴリでフィルタリングしながら登録エージェントを検索できる。Tools PortalのUIからでも、REST API経由でもアクセス可能。


レジストリ自体がMCPサーバーという設計思想

技術面で最も目を引くのは、Agent Registry自体がMCPサーバーとして動作する点だろう。

ClaudeやCursorといったAIツールから直接レジストリを照会できる。「セラー側のエージェント一覧を出して」「バイヤーエージェントを探して」といったクエリを、エージェントがエージェントに投げる構図が成り立つ。

エージェントのためのレジストリがエージェントから使えるという再帰的な設計は、AAMPが掲げる「エージェント同士が標準プロトコルで対話する」というビジョンの象徴的な実装と言える。


EquativとPubMaticが先行登録

ローンチ時点で、EquativとPubMaticがすでに登録を完了している。

EquativのChief Innovation Officer、Curt Larsonは次のように語っている。

プログラマティック広告のエコシステムをエージェントのフローに接続することは、効率と成果の両面で大きな可能性を持つ。既存の計測、透明性、安全性、説明責任のメカニズムを維持しながらこれを実現することが重要だ。

PubMaticのEVP Product Management、Nishant Khatriも、Agent Registryを「デジタル広告がエージェントAIの可能性を実現するために必要な、相互運用可能なインフラへの重要な一歩」と位置づけている。PubMaticはAgenticOSを展開しており、Agent Registryへの参加はその延長線上にある。


AAMPの中でAgent Registryはどこに位置するか

2026年2月26日、IAB Tech Labはエージェント広告の包括的な枠組みをAAMP(Agentic Advertising Management Protocols)と正式に命名した。AAMPは3層構造で設計されている。

内容 状況
Agentic Foundations ARTF(Agentic Real-Time Framework)、ガードレール ARTF公開済み、ガードレール開発中
Agentic Protocols OpenRTB・AdCOM・OpenDirectのエージェント拡張、SDK 開発中
Trust and Transparency Agent Registry、GPP連携 2026年3月公開

Agent Registryは最上層の「信頼と透明性」レイヤーに位置する。既存のOpenRTBやAdCOMをエージェント対応に拡張するプロトコル群と、その上に乗る信頼基盤という関係だ。

IAB Tech Labはこれらの既存標準をMCP、A2A、gRPCで包むアプローチを取っており、AIエージェントにネイティブな新標準を構築するAdCP(Ad Context Protocol)とは対照的な戦略を採っている。


なお、AdCPについては「AdCP(Ad Context Protocol)とは?AI時代の広告取引を変革する新標準を解説」でも取り上げている。

今後のロードマップ

Anthony Katsurは記事の中で、今後数週間以内にリリース予定の機能を明示している。

  1. 登録エージェントへのスコアリング・レーティング機能とフィードバック
  2. 地域・国別フィルタリング
  3. ローカルテナント、エージェントコンテナ、ダウンロード可能なMCPサーバーへの対応
  4. セラーエージェントが本当にそのプロパティを代表しているかの検証機能(ads.txtのエージェント版)
  5. 認可ユーザーによる既存エージェントの更新と承認プロセスの合理化

特に4番目は注目に値する。ads.txtがパブリッシャーの正当性を証明するように、エージェントが特定の広告プロパティを代表する権限を持つかどうかを検証する仕組みだ。エージェントの「なりすまし」を防ぐ仕組みとして、実用化されれば業界の信頼基盤を強化するだろう。

Agent Registry ロードマップ(2026年3月以降、数週間以内)
フェーズ1
品質向上
スコアリング・レーティング機能とフィードバック機能
地域・国別フィルタリング
フェーズ2
インフラ拡充
ローカルテナント・エージェントコンテナ対応
ダウンロード可能なMCPサーバー提供
フェーズ3
信頼基盤強化
セラーエージェントのプロパティ代表権検証(エージェント版ads.txt)
認可ユーザーによる更新・承認プロセスの合理化
凡例: 確定 高確率 予測 / 出典: IAB Tech Lab Anthony Katsur (2026-03-04)

So What? この発表が意味すること

エージェント広告の標準化競争が加速する

AAMPのAgent Registryは、既存標準の上にエージェント層を載せるIAB Tech Labの戦略が具体的なプロダクトとして形になった最初の例だ。一方で、AdCPのようにAIエージェントにネイティブな新標準を構築する動きも並行している。

筆者としては、広告業界の既存インフラ(OpenRTB、ads.txt等)との互換性を重視するIAB Tech Labのアプローチが現実的に見える。ただし、MCPやA2Aのような新しいプロトコル自体がまだ発展途上であり、Agent Registryの価値はこれらのプロトコルの普及速度に依存する。

広告主・パブリッシャーが今すべきこと

Agent Registry 時代に向けた3つのアクション

[1] 自社のエージェント戦略を明確にする

└─ Tools Portalへの登録は無料。エージェント開発中・導入予定なら早期登録で存在感を示す。IAB Tech Labメンバー外でも登録可能

[2] AAMPとAdCPの動向を並行して追う

└─ どちらが業界標準になるか未定。各陣営のワーキンググループ参加企業リストを判断材料に。ARTFのContainer Project Working GroupにはAmazon Ads・The Trade Desk・Netflix・Paramountが参加

[3] エージェント間取引のガバナンス体制を今から設計する

└─ Agent Registryは第一歩にすぎない。自社エージェントの権限範囲・取引上限・監査ログの設計は、レジストリの有無にかかわらず必要


まとめ

  • Agent Registryは、AIエージェントが広告取引を行う時代に向けた「身分証明」の仕組み。GPP IDやTCF GVL IDとの紐づけで既存の信頼基盤を活用している
  • レジストリ自体がMCPサーバーとして動作し、エージェントからの照会に対応するという再帰的な設計が特徴的
  • AAMPの3層構造の最上層に位置し、既存標準の拡張というIAB Tech Labの戦略を具現化した最初のプロダクト
  • EquativとPubMaticが先行登録。今後のスコアリング機能やads.txt的な検証機能の追加が、レジストリの実用価値を左右する

プログラマティック広告の市場規模は年々拡大を続けている。この巨大市場の取引をAIエージェントが担い始めるとき、誰が信頼の基盤を提供するか。IAB Tech Labは、その答えをAgent Registryで示した。


関連記事

参考記事

本記事は以下のニュースソースを参考に作成しました。

コメントを残す

上部へスクロール

Legare Techをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む