Forrester Wave 2026年版オムニチャネル広告プラットフォーム評価 – Amazon Adsがリーダーに

広告プラットフォームを選ぶとき、何を基準にしているだろうか。

2026年3月、調査会社Forrester Wave(日本で言う野村総研のような調査会社)が The Forrester Wave: Omnichannel Advertising Platforms, Q1 2026 を公開した。従来の「Omnichannel DSP」から名称を改め、初めて OAP(Omnichannel Advertising Platforms = オムニチャネル広告プラットフォーム) として7社を評価したレポートだ。結果、Amazon Adsが唯一のリーダーに選ばれた。

本レポートが示すのは、DSP市場の地殻変動である。メディアの計画・購入・最適化だけでは差別化できない時代に、広告プラットフォームは何を武器にすべきか。7社の評価結果とともに読み解く。


関連記事
CTV広告2026年の進化と日本市場の現実 – 米国との差はなぜ生まれるのか
AI agent同士の広告取引は本当に機能するのか? 4つの実証事例から見えた成果と課題

DSPからOAPへ — カテゴリ名変更が示す市場構造の転換

Forresterがカテゴリ名を変えたのには理由がある。

DSPの中核機能であるオムニチャネルのメディア計画・購入・最適化は成熟しきり、自動化も進んだ。レポート著者のNikhil Lai氏(Forrester Principal Analyst)は、MicrosoftがDSPを閉鎖したこと、中堅DSPの成長鈍化、DSP領域でのユニコーン不在を挙げ、DSP市場の縮小を指摘している。

広告主が求めるのは、もはやメディアバイイングツールではない。オーディエンス理解、クリエイティブ自動化、サプライパス最適化、インクリメンタリティ分析、AIエージェントを備えた包括的プラットフォームだ。Forresterはこの進化形をOAPと定義し、評価基準を刷新した。

市場はトップヘビーな構造にある。Amazon、Google、The Trade Deskの上位3社が市場シェアの約90%を占め、広告主は通常3~5プラットフォームを併用しているという。


評価結果の全体像 — 7社のポジショニング

Forresterは年間売上2億5,000万ドル以上のプラットフォーム7社を、現行製品(Current Offering)戦略(Strategy) の2軸で評価した。加えて顧客フィードバックを収集し、各社の実力を相対的にスコアリングしている。

ベンダー カテゴリ 現行製品 戦略 Forresterの評価
Amazon Ads Leader 3.64 4.40 決定論的リーチとAI駆動のフルファネルパフォーマンス
Google Strong Performer 3.78 2.80 圧倒的リーチとAI性能。ただしサポートに難あり
Yahoo Strong Performer 3.10 3.30 ウォールドガーデンとオープンの良いとこ取り
The Trade Desk Strong Performer 3.08 3.10 最大の独立系OAP。DOOH・コマースメディアに強み
StackAdapt Strong Performer 2.88 2.90 手頃で使いやすい。サポート品質が高い
Viant Technology Contender 2.72 2.00 完全自律型DSPを志向。CTV特化
Basis Contender 1.90 2.50 唯一の検索・ソーシャル統合。リニアTVに強み

注目すべき点がある。Googleは現行製品スコア3.78で全社中トップだが、今回の評価プロセスへの完全参加を辞退した。Forresterは公開情報や独自調査に基づいてスコアリングしたと明記している。


各社の強みと弱み — 何が評価を分けたのか

Amazon Ads(Leader) — 戦略スコア4.40で圧倒

Amazon Adsは、DSPとコマースメディアプラットフォームを統合し、”full-funnel advertising at scale for everyone(すべての広告主にフルファネル広告を)”というビジョンを掲げている。

強みは明確だ。認証済みグラフ(authenticated graph)により、米国の約90%の世帯に決定論的にリーチできる。Ads AgentとCreative Agentという2つのAIエージェントがメディアとクリエイティブの効率を高め、CTV・コマースメディアの在庫と知見では他社を凌駕する。

一方、自社在庫を優先しているのではないかという疑念が常につきまとう。Forresterはこの点を「contested claims of prioritizing its own yield(自社収益を優先しているという争われる主張)」と表現した。

Google(Strong Performer) — 製品力は最高だが戦略で後れ

Googleの現行製品スコア3.78は全社中最高だ。Display & Video 360は米国のCTV世帯の約98%にリーチし、年間5兆回の検索、1日10億回超のショッピング利用を誇る。予測AI・生成AIの実装も手厚い。

しかし戦略スコアは2.80にとどまる。カスタマーサービスが「impersonal and unempathetic(画一的で共感に欠ける)」と一貫して批判されており、プラットフォームの価格も高い。Googleは自社プロダクトを優先し、Win-Winのパートナーシップに消極的だとForresterは指摘する。

Yahoo(Strong Performer) — 第三の選択肢としてのポジション

Yahooは、ウォールドガーデンとオープンインターネットの「best of both worlds(良いとこ取り)」を目指す。ConnectIDで約2億3,200万の認証済みユーザーにリーチし、ネイティブ広告に特に強い。

外部エージェントの統合を許容する方針は独自性がある。自社のAIエージェント利用を強制せず、広告主のエージェントとの接続を重視している点はエージェンティックAI時代の差別化要因になり得る。

The Trade Desk(Strong Performer) — 独立系最大手の光と影

独立系OAPとして最大規模を誇るThe Trade Deskは、2025年にSinceraを買収してウォールドガーデン対抗力を強化した。Unified ID 2.0によるアイデンティティ基盤、デジタル屋外広告(DOOH)でのリーダーシップ、Walmartを筆頭とする世界最大のリテールデータパートナー市場を持つ。

しかし課題もある。エージェンティックAI機能が遅れ、新UIのKokaiはトレーダーの期待に応えていない。価格の不透明さと柔軟性の低さも顧客から批判されている。

StackAdapt(Strong Performer) — コスパの勝者

2025年Q1に2億3,500万ドルの資金調達を実施したStackAdaptは、使いやすさとサポート品質で評価された。オンボーディング・トレーニング・継続サポートでは最高スコアを獲得している。

弱点はアイデンティティ機能の遅れと、AIアシスタントIvyが「ChatGPTのラッパーに過ぎない」と評されたことだ。価格競争力は高いが、Forresterは手数料の値下げ競争に陥るリスクを警告している。

Contenders — Viant TechnologyとBasis

Viant Technologyは「完全自律型DSP」を目指すが、顧客はメディア計画・購入・最適化のコントロールを手放すことに消極的だ。コンサルティング型サポートは評価されている。

Basisはユニークなポジションにある。Google・Microsoftの検索広告との統合、全主要ソーシャルプラットフォームとの接続、リニアTV機能で唯一無二の存在だ。ただし、メディア計画やオーディエンス作成、エージェンティックAI、プログラマティック広告の中核領域で後れを取る。


OAP選定で重視すべき3つの視点

Forresterは、OAP選定にあたり広告主が考慮すべき3つの観点を示した。

1. 顧客理解の深さと公平性のバランス

ウォールドガーデン(Amazon、Google)は強力な認証済みオーディエンスシグナルを持つ。一方で自社在庫を優先するバイアスが生じ得る。オープンインターネット側のOAP(The Trade Desk、StackAdapt)は比較的公平な意思決定を提供するが、シグナルの質で劣る。どちらか一方ではなく、両者を組み合わせる戦略が現実的だ

2. メディアとクリエイティブのワークフロー統合

Forresterは「creative quality is the strongest determinant of advertising’s performance(クリエイティブの質が広告パフォーマンスの最大の決定要因)」と断言している。メディアバイイングとクリエイティブ制作を橋渡しできるプラットフォームが有利だ。Amazon AdsのCreative Agent、GoogleのAI駆動クリエイティブ自動化がこの領域をリードしている。

3. AIの3類型(予測・生成・エージェンティック)の成熟度

OAPの差別化要因として、予測AI、生成AI、エージェンティックAIの3つをバランスよく実装しているかが問われている。エージェンティックAIのスコアで5.00を獲得したのはAmazon Ads、Google、Viant Technologyの3社。ただしViantの場合、自律性が高すぎて顧客が採用をためらうというジレンマがある。透明性とコントロールを維持しつつAIを活用できるかが鍵だ。


So What? — このレポートが広告主に示す次の一手

広告プラットフォーム市場は寡占がさらに進む

上位3社でシェア90%という構造は、今後さらに強まる可能性が高い。MicrosoftのDSP撤退が象徴するように、中間規模のプレイヤーには生き残りの余地が狭まっている。広告主にとっては、メインのOAPを1~2社に絞り、補完的に専門性の高いプラットフォームを組み合わせるハブ&スポーク型の構成が現実解だろう。

エージェンティックAIが今後の評価軸になる

今回の評価でエージェンティックAI(自律的にタスクを実行するAI)が独立した評価基準として登場した。2026年後半にかけて、各社のエージェント機能は急速に進化するはずだ。広告運用チームは、AIエージェントとの協働プロセスを今から設計しておく必要がある。

検索・ソーシャルの統合が次の戦場

Basisだけが検索広告・ソーシャル広告を統合している事実は、OAP市場にまだ大きな穴があることを示す。プログラマティック、検索、ソーシャル、CTVを横断する真のオムニチャネルプラットフォームは、まだ存在しない。この領域でのM&Aや機能拡張が2026年後半~2027年の注目テーマになるだろう。


まとめ

  • Amazon Adsが唯一のリーダー。戦略スコア4.40は2位以上を大きく引き離す
  • Googleは製品力最高スコア(3.78)だが、サポートと戦略で課題を抱える
  • DSPは「Omnichannel Advertising Platforms(OAP)」に進化。メディアバイイング以外の総合力が評価軸に
  • エージェンティックAI、クリエイティブ自動化、アイデンティティの3領域が今後の差別化ポイント
  • 上位3社でシェア90%の寡占構造。広告主はハブ&スポーク型のプラットフォーム構成を検討すべき

関連記事

参考記事

本記事は以下のソースを参考に作成しました。

主要ソース

関連資料

admin