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Google利用規約が2026年7月30日に改定 – AIに情報を使われるという誤解を5つの視点で検証
Googleが規約を変えて、AIにユーザーの情報をどんどん使うようになる。そんな噂が本当なのか、新旧の利用規約全文を突き合わせて検証してみた。
話はもう少し込み入っている。目立つAI関連の禁止条項はほとんど2024年版から変わっていない。一方で、地味だが意味深い書き換えが数カ所ある。広告主、パブリッシャー、DSP・SSP、一般ユーザー、そしてAIコンテンツライセンシング市場、それぞれの立場から何が変わり、何が変わらなかったのかを見ていく。
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実際に何が変わったのか
Google利用規約の2026年7月30日改定の中身は、AI不正利用の禁止条項ではない。ネットワーク通信費の新設、生成コンテンツ品質の免責、医療アドバイス例外文言、コンテンツ削除基準の緩和という4点が実際の変更点であり、AI学習への利用そのものを新たに制限した改定ではない。
policies.google.com/terms/update に掲載された新版と、現行の2024年5月22日版を全文diffで比較した。結果はこうだ。目立つAI関連の禁止条項はほとんど2024年版から変わっていない。
| 新旧利用規約 全文diff比較の結果 | |
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変わらなかったもの
・ジェイルブレイク/プロンプトインジェクションの禁止
・機械学習モデル開発目的でのAI生成コンテンツ利用禁止 ・robots.txt違反のクロール禁止 2024年5月22日版と一字一句同一
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実際に変わった4点
①「ネットワーク接続の費用」新設、待機中通信の目的に「広告を含む業務改善」を明記
②UGC説明に「一部ユーザーに適さない可能性」の一文追加 ③免責条項に留保追加、医学的助言禁止に「診断・治療に相当しない」の含み追加 ④削除基準が「損害の合理的確信」→「合理的判断」に緩和 要注目の変更
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| 出典: 本記事による新旧全文比較(policies.google.com/terms/update 新版 と policies.google.com/terms 2024年5月22日版現行規約のdiff) | |
3番目が特に興味深い。裏返せば、特定サービスの追加規約さえ整えば、医療分野でのAI活用に道を開く余地を残したとも読める。Geminiのヘルスケア領域拡大を見据えた布石だろう。
広告主とDSP・SSPが直面する変化
Google AI Mode内のショッピング広告展開については「Google AIモード内のショッピング広告導入が発表」で詳しく解説している。
広告主にとっての本丸は、実は消費者向けの一般規約ではなくGoogle Ads固有の追加規約の方だ。一般利用規約の発効日は7月30日だが、Google Ads向けの規約は別文書として7月1日に発効している。Search Engine Landによれば、新条項は「Googleおよびその関連会社が、自動化されたプログラム機能を用いて広告主に代わりターゲット・広告・遷移先をフォーマット・選定・生成することを許可する」という一文を明記した。Googleは同時期にAI Max機能への移行を進めており、2026年9月には手動運用型のキャンペーンから自動化への切り替えが実質必須になる見込みだ。
これをどう受け止めるべきか。すでにPrivacy Sandboxは2025年に事実上頓挫している。業界では「もう誰も気にかけていない」という声すら出ていた。Cookie撤廃の受け皿として期待されたプロジェクトが失敗した以上、広告主とDSPはファーストパーティデータへの投資を自前で進めるほかない。
The Trade Deskのようなインディペンデント系DSPには、これはむしろ試練だ。Google、Amazon、MetaのウォールドガーデンがAIを広告運用の中核に据えるほど、外部DSPの差別化ポイントは狭まる。一方でGeminiへの広告出稿は2026年中の開始が予告されており、フォーマットも価格も未定のまま予算配分の判断を迫られる広告主は少なくない。生成AIがメディア品質を悪化させたと答えた広告主が半数を超えるという調査もある。効率化と品質担保のバランスを、各社が手探りで探ることになる。
パブリッシャーの収益構造が壊れていく
一番深刻な打撃を受けているのはパブリッシャーだろう。AI Overviewsが検索結果に表示されると、クリック率が通常の半分近くまで落ち込むという調査結果が複数出ている。Pew Research Centerが実際の検索クエリ6万8000件を追跡した調査では表示ありで8%、表示なしで15%だった。Googleはこの調査期間がAI Overviewsと無関係のアルゴリズムテストと重なっていたと手法に異議を唱えているが、小規模パブリッシャーほど打撃は大きく、2年間で6割前後トラフィックを失ったという報告もある。
Googleの立ち位置は単純な「加害者」では片付けられない。検索市場でのシェアの大きさを背景に、パブリッシャーには実質的な二択が突きつけられている。AI訓練へのコンテンツ提供を許可すればGoogle NewsやGemini上での露出を維持できるが、拒めば既存の掲載手数料プログラムから外れるリスクがある、という構図だ。Penske Mediaのように独占禁止法での提訴に踏み切った企業もある。
その一方で、コンテンツを収益化する新しい仕組みも育ち始めている。CloudflareのPay per crawlは、AIクローラーによるアクセスに課金する仕組みをパブリッシャー側に用意した。TollBit経由でボットトラフィックを収益化しているサイトも出てきている。News CorpはOpenAIと5年2億5000万ドル規模の契約を結び、同時に他のAI企業へは法的措置も辞さない「協力と対抗の並走」戦略を取っている。パブリッシャーの生き残り策は、訴訟・ライセンス契約・直接収益化の三本立てに収斂しつつあるとみていい。検索経由の流入構造そのものの変化については「Search Console『プラットフォームプロパティ』をパブリッシャー目線で読む」も参考になる。
AIコンテンツライセンシングという新しい市場
パブリッシャーとAI企業の間の契約は、この1年で質的に変わった。当初は「学習データとして一括利用させる」形が中心だったが、今は検索結果に近いリアルタイムのコンテンツアクセス権を売る契約が急増している。ある調査では、公開されているライセンス契約が2023年の2件から2026年には30件超まで伸びる見通しだという。
RedditがGoogleと年間契約を結び、同時にOpenAIとも別枠で契約しているように、複数のAI企業と並行して交渉するのが標準的な動きになった。ニュース・報道分野の契約が最も多いというのも象徴的だ。ジャーナリズムのコンテンツはファクトの正確性が高く、AIの回答品質に直結するため、対価を払ってでも欲しい素材になっている。
この市場の形成過程で、Googleの規約にある「robots.txtでクロールとトレーニングを制限できる」という条項が実質的な交渉材料になっている点は見逃せない。ブロックする権利があるからこそ、対価を要求する余地が生まれる。規約上の禁止事項がそのままパブリッシャーの交渉力の源泉になっている構図だ。
一般ユーザーにとっての意味
一般ユーザーへの直接的な影響は、今回の規約改定そのものからは読み取りにくい。プライバシーポリシー自体は改定の対象外であり、広告カスタマイズ目的のコンテンツ分析条項も従来のままだ。
ただし文脈としてのGemini浸透は急速に進んでいる。EMARKETERがSimilarwebのデータをもとに報じたところでは、GeminiとChatGPTの合計サイト訪問数に占めるGeminiの割合は2025年12月の24%から2026年6月には34.7%まで拡大した。
| Gemini対ChatGPT サイト訪問シェアの推移 | |||
半年でGeminiのシェアが約11pt上昇(ChatGPTは同幅で減少)
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| 出典: EMARKETER(Vladimir Hanzlik氏投稿、Similarwebデータ) |
Gmailを含むWorkspace全体の「Smart Features」設定がデフォルトで有効化され、ユーザーの同意なしにGeminiがメールやカレンダーを解析できる状態になっていたことが2025年11月に発覚し、大きな反発を招いた。
規約の文言そのものより、Googleの各サービスにAIがどこまで組み込まれ、それがどこまでデフォルトで有効化されるかの方が、一般ユーザーにとっては実感を伴う論点になりそうだ。
まとめ
Google利用規約の2026年7月30日改定を一次資料まで遡って検証すると、「AIにどんどん情報を使われる」という直感的な理解は、この規約単体の変更内容としては裏付けが弱い。実際に動いているのは、パブリッシャーとの力関係の再編、広告運用の自動化圧力、そしてAIコンテンツライセンシングという新市場の急拡大だ。
規約の一字一句よりも、Google NewsやGeminiでの露出と引き換えにコンテンツ提供を迫る構造、AI Overviewsによるトラフィック流出、Gemini広告の本格始動という3つの動きを注視した方が実務上は意味がある。次の焦点は、UK CMAをはじめとする規制当局がGoogleにオプトアウトの実効性をどこまで担保させられるかだろう。
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- Sell-Side Agentベータテスト最前線 – パブリッシャーのAgentic広告は今どこまで来たか
参考記事
Google公式・一次資料
- Google利用規約(新版プレビュー) – Google (発効日2026年7月30日)
- Google利用規約(現行版) – Google
AIコンテンツライセンシング
- AI Content Licensing Deals: June 2026 Update – Media and the Machine
- Introducing pay per crawl – Cloudflare Blog
- Reddit’s AI Data Licensing With Google – Yahoo Finance
- News Corp eyes multi-LLM licensing strategy – Storyboard18
広告主・DSP/SSP
- Google Tells Advertisers It’ll Bring Ads to Gemini in 2026 – Adweek
- Google Ads updates terms of service ahead of July 2026 rollout – Search Engine Land
- Google’s Privacy Sandbox elimination ends the quest for a cookieless Chrome – eMarketer
- Google Touts Its AI Ad Tech Adoption And New AI Max Features – AdExchanger
パブリッシャー
- The AI Search Reckoning Is Dismantling Open Web Traffic – AdExchanger
- Google AI Overviews Impact On Publishers & How To Adapt Into 2026 – Search Engine Journal
- Google Tells News Publishers to Share Content for AI Training or Lose Fees – PYMNTS
Gemini動向・一般ユーザー視点
- Google Sparks Backlash After Gmail Setting Lets Gemini Peek Inside Inboxes – Yahoo News
- Gemini対ChatGPTのサイト訪問シェア推移データ – EMARKETER(Vladimir Hanzlik氏投稿、Similarweb調べ)