ChatGPTのようなAIが、ニュースサイトの記事を勝手に読み込んで答えの材料にしている。記事を書いた側には断りも対価もない。この状況に、パブリッシャー側からようやく対抗策が出てきた。
2026年7月14日、AIライセンシング企業のNext Net(CEO: Franklin Rios)と、ESSENCEやRefinery29を傘下に持つSundial Media & Technology Group(CEO: Kirk McDonald)が、「SAIL」(Standardized Agentic Intelligence Ledger)という新しい枠組みを発表した。AIが記事をどう使ったかを記録し、使うたびに対価を払わせ、しかも使われ方そのものにパブリッシャーが口を出せるようにする仕組みだ。
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目次
なぜ今、この仕組みが必要なのか
AI検索の台頭で、パブリッシャーのサイト訪問は目に見えて減っている。Digidayの報道によれば、2026年第2四半期にはAI検索の影響で広告在庫が最大40%落ち込んだパブリッシャーもあるという。Cloudflareが2026年7月に公開したダッシュボードでは、AIクローラーの訪問が人間の紹介1件につき最大5万回に達するサイトも確認された。ユーザーはAIの回答で満足し、元記事のページにはたどり着かない。
コンテンツは読まれているのに、収益は生まれない。この矛盾が、パブリッシャー各社を新しい収益モデルの模索に向かわせている。
SAILの仕組み NVIDIA基盤とpay-per-queryモデル
SAILがやっていることはシンプルだ。AIがどの記事をどう使ったかを一件ずつ記録し、使われるたびにお金を払わせる。裏側はNVIDIAの計算基盤で動いており、記事の中身をAIが読み取れる形式に変換したうえで、1回使われるごとに課金する「pay-per-query」という方式を採る。
この課金方式は、ゼロから作ったものではない。IAB Tech Labが2025年6月に発表し、同年8月に正式なワーキンググループとして動き出した「CoMP」(Content Monetization Protocol)という業界標準に乗っている。CoMPは、AI企業がサイトの情報を読み取る前に商取引の条件を決めておくための共通ルールで、SAILはそれを実際に動かす仕組みのひとつという位置づけになる。
| SAIL誕生までの標準化の流れ | |
| 2025年 6月4日 |
★ IAB Tech LabがCoMP(Content Monetization Protocol)を発表 |
| 2025年 8月 |
★ CoMPワーキンググループが正式始動 |
| 2026年 7月14日 |
● Next NetとSundial Media & Technology GroupがSAILを発表(CoMP/RSL-Compatible) |
| 凡例: ★ 確定済みの出来事 ● 本記事の主題となる発表 | |
| 出典: IAB Tech Lab公式発表(2025-06-04)、Next Net / Sundial Media & Technology Group公式発表(2026-07-14)に基づき作成 | |
第一弾のパートナーは、Sundial傘下のESSENCE、Refinery29、AFROPUNK、Beautyconの4ブランド。まずは自社グループ内での実証から始める形だ。
McDonald氏が語る「発言権」の中身
SAILが今までのライセンス契約と違うのは、お金を払うだけでなく、AIが出す答えの中身にまでパブリッシャーが関与できる点だ。Sundial CEOのKirk McDonald氏はこう語っている。
If I can’t be involved in the design of the outcome, then I’m just a supplier of content, and the machines are leading us
— Kirk McDonald, Sundial Media & Technology Group CEO
単なる素材の供給者で終わり機械に主導権を握られるか、成果物の設計に関わる当事者になれるか。パブリッシャーにとって、これは収益以上に大きな分岐点になるだろう。
SAILは業界標準になるか
AIとパブリッシャーの関係を作り直そうという動きは、SAILだけの話ではない。RSL(Really Simple Licensing、コンピュータが読み取れる形の利用許諾ルール)や、CloudflareのContent Signals Policyなど、似た取り組みがあちこちで同時に進んでいる。SAIL自身も、公式発表文で「CoMP/RSL-Compatible」とうたっており、自分だけの独自ルールを作るのではなく、既にある標準に乗る道を選んだ。乱立する規格のひとつとして張り合うより、AI企業側が対応しやすい共通の仕組みに乗ったほうが、実際に使ってもらえる可能性が高いと踏んだのだろう。
| SAILを取り巻くプレイヤー関係 | |||
| 発表元(共同開発) | |||
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Next Net
AIライセンシング企業 CEO: Franklin Rios |
Sundial Media & Technology Group
メディアグループ CEO: Kirk McDonald |
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↓
SAILを提供
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| 第一弾パートナーブランド(Sundial傘下) | |||
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ESSENCE
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Refinery29
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AFROPUNK
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Beautycon
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| 【基盤・準拠標準】 基盤技術: NVIDIAのアクセラレーテッド・コンピューティング基盤上に構築 準拠標準: IAB Tech Lab「CoMP」およびRSL(Really Simple Licensing)に互換(CoMP/RSL-Compatible) |
|||
| 出典: Next Net / Sundial Media & Technology Group公式発表(2026-07-14)に基づき作成 | |||
もっとも、現時点でSAILはSundial傘下の4ブランドに限定された実証段階にある。pay-per-queryの単価や収益分配率、そしてSAILの枠組みを使うと表明したAI企業の名前は、今回の発表では一切明らかにされていない。設計思想は固まっているが、実際に機能する仕組みへ育つかは、これからの参加表明とAI企業側の反応にかかっている。
日本のパブリッシャーやアドテク関係者にとっても、AIとのライセンス交渉がどう標準化されていくかを占う事例として、この動きは見ておく価値がある。CoMPやRSLへの準拠を掲げるプレイヤーが増えるかどうかは、今後の業界標準を読むうえで一つの指標になりそうだ。
まとめ
- SAILはNext NetとSundial Media & Technology Groupが2026年7月14日に発表した、AIのコンテンツ利用を記録・可視化する新フレームワーク
- IAB Tech LabのCoMP標準に準拠し、NVIDIA基盤上でpay-per-queryモデルを実装する
- 対価だけでなく、AI出力の設計にパブリッシャーが関与できる仕組みを目指している
- 現時点ではSundial傘下4ブランドの実証段階で、単価や他社展開の条件は未公表
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参考記事
- This New Training Framework Gives Publishers A Say In How AI Uses Their Work – AdExchanger (2026-07-14)
- Next Net and Sundial Media & Technology Group Launch SAIL, a New Rights-Managed Content Standard for AI – GlobeNewswire (2026-07-14)
- Next Net and Sundial pair four media brands with NVIDIA for AI content pay – ppc.land (2026-07)
- IAB Tech Lab Announces CoMP Framework – IAB Tech Lab (2025-06-04)
- Publisher ad supply fell by up to 40% in Q2 as AI search choked the open web – Digiday