Netflix 2026年Q3決算|広告収入見通しを30億→27億ドルに下方修正

Netflixは2026年10月20日、2026年第3四半期(7〜9月期)決算を発表しました。売上高は前年同期比11.8%増の128.7億ドル、営業利益率は34.6%と、いずれも自社予想を上回っています。ところが同じ株主宛レターで、2026年の広告収入見通しを「約30億ドル」から「約27億ドル」へ引き下げました。Investing.comによると、株価は時間外取引で約6%下落しています。

2026年4月と7月の決算で「約30億ドル」と繰り返してきた数字が、なぜ10月に動いたのか。過去5回分の株主宛レターを並べて、広告事業で何が遅れたのかを読み解きます。

前回のQ2決算記事では、Q3で確かめる点として「11.7%というQ3ガイダンスの成長率がどう着地するか」と「米国アップフロント商談の成約状況」を挙げました。成長率は11.8%とほぼ予想どおりでした。一方、今回の株主宛レターは米国アップフロントの成約結果に触れておらず、代わりに出てきたのが広告収入見通しの引き下げです。

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Netflix 2026年Q3決算の主要数字

指標 Q3 2026 実績 自社予想(2026年7月時点) Q3 2025
売上高 128.7億ドル(+11.8%) 128.6億ドル 115.1億ドル
営業利益 44.6億ドル(+37%) 42.7億ドル 32.5億ドル
営業利益率 34.6% 33.2% 28.2%
純利益 36.6億ドル 34.5億ドル 25.5億ドル
希薄化後EPS 0.87ドル(+49%) 0.82ドル 0.59ドル
フリーキャッシュフロー 28.8億ドル ― 26.6億ドル

出典: Netflix 2026年Q2・Q3 株主宛レター。EPSは2025年11月の10対1株式分割を反映した値。

四半期営業利益と営業利益率の推移
四半期 営業利益 営業利益率
Q3 2025
32.5億ドル
28.2%
Q4 2025
29.6億ドル
24.5%
Q1 2026
39.6億ドル
32.3%
Q2 2026
41.9億ドル
33.4%
Q3 2026
44.6億ドル
34.6%
Q4 2026(予想)
35.0億ドル
26.0%
出典: Netflix 株主宛レター(2025年Q3〜2026年Q3)。Q4 2026(予想、薄い色のバー)の利益率には人員削減費用 約1.2ポイントを含む。

利益が予想を上回ったのは、Netflix自身の説明では「費用の計上時期のずれ」が主な理由です。会員の解約率は世界全体でも米国でも前年より改善し、予想より良かったとしています。

2026年10〜12月期(Q4)の見通しは、売上高134億ドル(+12%)、営業利益率26.0%。この利益率には、2026年10月14日に発表した約1,000人(従業員の約6%)の人員削減の費用が約1.2ポイント含まれます。Varietyによると、市場はQ4売上を135億ドルと見込んでいたため、こちらも小幅に届きませんでした。

増収増益でも株価が下がったのはなぜか

数字だけ見れば好決算です。それでも株が売られた背景には、売上の伸びが四半期ごとに鈍っている事実があります。

四半期売上高と前年同期比の推移
四半期 売上高 前年同期比
Q3 2025
115.1億ドル
+17.2%
Q4 2025
120.5億ドル
+17.6%
Q1 2026
122.5億ドル
+16.2%
Q2 2026
125.6億ドル
+13.4%
Q3 2026
128.7億ドル
+11.8%
Q4 2026(予想)
134.4億ドル
+11.5%
出典: Netflix 株主宛レター(2025年Q3〜2026年Q3)。Q4 2026(薄い色のバー)は自社予想。

Varietyはこの伸び率を「3年ぶりの低さ」と報じています。視聴時間への不安も消えていません。Jefferiesの推計(Variety報道)では、会員1人あたりの月間視聴時間は2023年上半期の66時間から2026年上半期には約49時間まで減りました。Netflixもレターで「視聴時間の伸びに投資家の懸念があることは承知している」と書き、伸びを加速させたいと認めています。

EPSの伸び(+49%)が純利益の伸び(約+44%)を上回っている点も見ておきたいところです。Q3の自社株買いは過去最大の48億ドル、6,390万株でした。希薄化後の株式数は1年で43.4億株から42.0億株に減っています。1株あたりの数字は自社株買いでかさ上げされており、本業の勢いを見るなら売上の伸び率のほうが正直だと私は考えます。売上の減速を補う次の成長分野として期待されていたのが広告であり、だからこそ今回の下方修正は金額以上に重く受け止められました。

Q3 2026 地域別売上と前年同期比
米国・カナダ
56.3億ドル +11%(為替影響除く +11%)
欧州・中東・アフリカ
41.1億ドル +11%(+9%)
中南米
16.0億ドル +17%(+12%)
アジア太平洋
15.4億ドル +12%(+15%)
出典: Netflix 2026年Q3 株主宛レター

なぜ広告収入見通しは27億ドルに下がったのか?

Netflixの説明は「一部の広告プロダクト機能の展開が想定よりやや遅れたため」です。需要が落ちたとは書いていません。サブスクリプション収入が想定を上回ったため、通期売上の見通しは511億ドルと、前回レンジの中央値から0.2%低いだけにとどまりました。

過去1年の株主宛レターで、広告収入の見通しがどう語られてきたかを並べます。

発表日 対象決算 広告収入についての記述 通期売上の見通し
2025年10月21日 2025年Q3 2025年の広告収入は2倍超になる見込み 2025年: 451億ドル
2026年1月20日 2025年Q4 2025年実績は15億ドル超(2.5倍超)。2026年はおよそ2倍に 2026年: 507〜517億ドル
2026年4月16日 2026年Q1 2026年は約30億ドルで計画どおり 507〜517億ドル(据え置き)
2026年7月16日 2026年Q2 約30億ドルで計画どおり 510〜514億ドル(幅を縮小)
2026年10月20日 2026年Q3 約27億ドルに引き下げ 511億ドル

出典: 各四半期のNetflix株主宛レター(SEC提出書類)

広告収入の見通し推移:30億ドル→27億ドルへ
2025年 実績
15億ドル超
2026年見通し(4月時点)
約30億ドル
同(7月時点)
約30億ドル
同(10月時点)
約27億ドル(▼約3億ドル)
出典: Netflix 株主宛レター(2025年Q4〜2026年Q3)

1月の「およそ2倍」が4月に「約30億ドル」という具体的な数字になり、7月まで維持されました。その数字が10月に1割下がった、という流れです。

決算インタビューでGreg Peters共同CEOは、広告事業について次のように話しています。

「2026年の野心的な目標に対して、現在は少し遅れている。それでも広告事業は2026年に80%以上伸びている」
Greg Peters(Netflix共同CEO、2026年10月20日の決算インタビュー)

遅れの中身としては、新しい広告商品の展開とパートナー連携に時間がかかっていると説明しました。そのうえで、短期的に少し数字を落としても長期的に有利な立ち位置を取るほうがよい、と述べています。

1年間の広告施策を振り返る

遅れたのは「プロダクト機能」です。Netflixがこの1年でどんな機能を出してきたかを、レターの記述からたどります。

  1. 2025年Q4〜: Amazon DSPを世界で、AJAのDSPを日本で、プログラマティック取引に組み込む(2025年10月のレター)
  2. 2026年4月時点: 取引する広告主は4,000社超(前年比70%増)。広告付きプランは、広告を提供する国での1〜3月期の新規登録の60%超を占めた
  3. 2026年夏: 一時停止中に表示する「Pause Ads」とライブ配信の広告枠を、プログラマティックで買えるようにする(2026年7月のレター)
  4. 2026年Q3: 世界で使えるCTVマーケットプレイス取引で、プログラマティックの窓口を広げた。中南米でMercadoLibre、欧州・中東・アフリカでAdformと新たに提携。リーチ・フリークエンシー・アトリビューションをDSPの中で測れるようにする機能を拡充中
  5. 2027年: 広告付きプランを新たに15か国で開始。第1弾は2027年3月で、欧州9か国とコロンビア、ペルー、ニュージーランド
広告事業:1年間のプロダクト展開
2025年Q4〜 Amazon DSP(世界)とAJAのDSP(日本)をプログラマティック取引に追加
2026年4月 広告主が4,000社超(前年比70%増)に。新規登録の60%超が広告付きプラン
2026年夏 Pause Adsとライブ配信の広告枠もプログラマティックで購入可能に
2026年Q3 CTVマーケットプレイス取引を拡大。MercadoLibre・Adformと新たに提携
2027年(予定) 広告付きプランを新たに15か国で開始。第1弾は3月、欧州9か国とコロンビア・ペルー・ニュージーランド
出典: Netflix 2025年Q3〜2026年Q3 株主宛レター

取引の窓口を広げ、計測を整え、売れる在庫を増やす。順番としては筋が通っています。Peters氏は自社の広告技術基盤(Netflix Ads Suite)の構築を「業界で最速」と表現しつつ、パートナーとの連携方式を詰める作業が想定より重かったと認めました。

日本でのCTV広告の買い方や市場の事情は「CTV広告2026年の進化と日本市場の現実 – 米国との差はなぜ生まれるのか」で整理しています。

筆者の見方:需要ではなく納期の問題

私は今回の下方修正を「広告が売れなかった」ではなく、「自分で決めた納期に機能が間に合わなかった」と読んでいます。

根拠は3つ。1つ目は成長率です。2025年の実績15億ドル超に対して27億ドルなら約1.8倍で、Peters氏の「80%以上の成長」と合います。2つ目に、Peters氏は「需要は引き続き強く、広告主の幅も広がっている」と明言しています。3つ目は遅れた理由です。Netflixは会員のプライバシーと自社データ(ファーストパーティデータ)の優位を守る連携方式にこだわると説明しており、外部のDSPや計測会社とつなぐたびに交渉と開発が増えます。速さよりデータの主導権を選んだ結果の遅れと見るのが自然です。

もう1つ注目したいのは、広告付きプランの会員1人あたり収入(広告収入を含む)が、広告なしプランをまだ下回っているとPeters氏が認めた点です。差は縮まっているものの、Peters氏自身がこれを「まだ実現できていない収益」と表現しています。広告主の側から見ると、在庫に対して買い手が追いついていない状態が当面続くということです。日本の広告主や代理店にとっては、AJAやAmazon DSP経由で条件の良い枠を試せる期間がまだ残っている、と私は見ています。

今後の注目点

次の確認ポイントは2027年1月のQ4決算です。CFOのSpence Neumann氏は、2027年の通期見通しはそこで出すと述べました。目標としては「2桁の売上成長、利益率の拡大、フリーキャッシュフローの増加」を続けるとしています。

Q4はNFLの感謝祭前夜の試合とクリスマスの2試合、Tyson Fury対Anthony Joshuaのボクシングと、四半期としてはNetflix史上最大のライブ編成。ライブ枠はプログラマティックで買えるようになったばかりで、ここで広告収入がどこまで積み上がるかで、27億ドルの見通しを守れるかが決まるでしょう。2026年のフリーキャッシュフロー見通しも、不動産取引の影響で125億ドルから約120億ドルへ下がりました。

まとめ

  • Netflixの2026年Q3決算は、売上高128.7億ドル(+11.8%)、営業利益率34.6%と自社予想を上回った
  • 一方で、2026年の広告収入見通しを約30億ドルから約27億ドルへ下げ、株価は時間外で約6%下落した
  • 理由は広告プロダクトの展開とパートナー連携の遅れで、Netflixは需要そのものは強いと説明。広告事業は2026年に80%以上伸びる見込み
  • 売上の伸び率は5四半期で17.2%から11.8%まで落ちており、広告に寄せる期待は大きい
  • 次の焦点は2027年1月に示される通期見通しと、2027年3月から始まる広告付きプランの新市場展開

広告主にとっての中身は、Netflixの在庫をプログラマティックで買える経路と計測の選択肢が、半年前より確実に増えたことです。下方修正の見出しだけで判断せず、自社の買い付け経路から何が買えるようになったかを確認しておくとよいでしょう。

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