セルサイドキュレーションの中身は見えない 21製品の公開情報を検証

2026年11月3日、No Fluff Advisory の Evgeny Popov 氏が、セルサイドキュレーションの公開情報を調べた論文を公開しました(2026年11月4日に改訂)。ディールの中身も料金も効果も、公開情報だけでは確かめられない、というのが結論です。

調査した21製品のうち、売り手の一覧、選定ルール、データの出どころの3点をすべて開示した製品はなく、料率を公開した製品もありませんでした。買う広告主も、在庫を出すパブリッシャーも、必要な情報は契約や管理画面で取りにいくしかありません。Google アド マネージャーを使う媒体社は、自社の初期設定も確認しておきたいところです。

読むときの注意点もあります。調査は AI エージェントが行い、予定していた証拠と草稿の外部レビューは著者の判断で省かれました。著者自身も、Semasio を傘下に持つ Samba に勤め、過去に Verve と Lotame に在籍し、AdCP を管理する AgenticAdvertising.org の作業部会を共同で率いる立場です。そこで筆者は、市場の数字を AdExchanger の報道、ANA(全米広告主協会)の発表、各社のヘルプページで確かめました。

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セルサイドキュレーションとは何か

在庫の選択とデータの付与を SSP 側で済ませ、結果をディールIDとして買い手に渡す取引です。論文は、入札リクエストが DSP に届く前に、文書化された選定ルールやデータ付与を適用したディールIDと定義しています。

作り手はさまざま。Microsoft Curate は小売、データ会社、トレーディングデスクなどをキュレーターの例に挙げ、買い手自身が作ることもできます。Stagwell は2026年7月16日に、自社ネットワークの取引先を集めた Stagwell Curate を始めました。同じ言葉でも、買っているものは製品ごとに違います。

キュレーションはどれくらい広がっているのか

オークションの数で見ると約4分の3です。Jounce Media の集計では、DSP に提示された RTB オークションの72.7%がキュレーションでした。

オークションに占める割合(誰が需要を決めるか別)

Jounce Media の集計
キュレーション
72.7%
オープンオークション
18.6%
パブリッシャーの PMP
8.7%
オークション数の割合で、広告費の割合ではありません
出典: Jounce Media(AdExchanger と No Fluff Advisory 経由)

ただし、これは広告費の割合ではありません。AdExchanger によると、集計は2025年3月、44の取引所から送られた15億件の入札リクエストが対象で、平均的なリクエストにはオープンオークションのほかにディールIDが3.5個付いています。ディールIDの数だけオークションを数えるため、IDを多く付けるほど割合は上がる。Jounce のレポートを要約した Playwire も、実際の DSP の支出に占める割合は73%を下回るだろうと書いています。

ANA の数字は別物です。2026年2月に発表したベンチマークでは、2025年第4四半期に PMP が支出の中央値で92%超を占めました。ANA はこれをキュレーションが標準になった証拠として紹介していますが、論文によると ANA の PMP はディールID付きの取引全般を指します。

米国の取引に占めるキュレーションの割合を測った資料は、論文の調査範囲では見つかっていません。取引の4分の3がキュレーションという説明を見たら、何の4分の3なのかを確かめたほうがよいでしょう。

公開情報で確かめられなかったこと

ディールに何が入っているか

最も詳しいのは Equativ で、50社以下のディールなら配信配分の設定画面でパブリッシャー名の一覧を確認できます。それでも、特定のディールの売り手をすべて示し、配信が一覧どおりだったかまで確かめられる製品はありませんでした。

ads.txt や sellers.json、SupplyChain にはキュレーターという役割がありません。IAB Tech Lab が2025年12月に公開した Deals API 1.0 はキュレーターと手数料の種類を記録できますが、金額の欄はなく、論文は実運用の例も確認できなかったとしています。

料金はいくらか

21製品のどれも料率を公開していません。手がかりになるのは Jounce の2025年4月のレポートで、顧客限定のため Playwire と AdExchanger の要約から内訳が分かります(合計は四捨五入で101%)。

手数料の種類別、キュレーテッドディールに占める割合

Jounce の2025年4月のレポート
追加の手数料なし
50%
マージン型(中央値14%)
34%
固定 CPM 型(中央値0.48ドル)
10%
固定価格型
7%
合計は四捨五入で101%
出典: Jounce の2025年4月のレポート(Playwire・AdExchanger の要約)

仕組みは AdExchanger の例が分かりやすい。2ドルで落札された表示にキュレーターの手数料10%がかかると0.20ドル。DSP が15%の0.30ドルを取り、残りをパブリッシャーと SSP が分けます。

2ドルで落札された場合の受け取り先別の金額

AdExchanger の例
パブリッシャーと SSP
1.50ドル
DSP
0.30ドル
キュレーター
0.20ドル
棒の長さは落札額2ドルに対する割合
出典: AdExchanger の例

固定価格型は、さらに中身が見えません。AdExchanger の例では、パブリッシャーの下限価格が4ドルの在庫に15ドルの固定価格を付けた場合、差額の11ドルの行き先は Jounce にも分からないとされています。

優先的に買えるのか

取引所15製品のうち14製品は、標準で優先権や下限価格の優遇を受けるかどうかを公開文書で判断できませんでした。Microsoft は、キュレーションの取引は保証型ではなく、売り手の下限価格や広告品質の設定を上書きしないと明記しています。Google でも、キュレーターの下限価格が効くのはパブリッシャーの下限価格より高いときだけです。

品質は本当に高いのか

論文が見つけた品質の数値は、どれも販売者、代理店、提携先が出したものでした。第三者が特定のディールを検証した例もありません。ANA は2023年の報告書の発表で、PMP なら割高でも価値があると決めつけられる時代は終わったと書いています。ディールIDが付いていることと、在庫の質が高いことは別の話です。

キュレーターは大手の傘下に入っている

データ会社の買収も続いています。Experian は2024年12月に Audigent を買収し、Publicis は2025年3月に Lotame の買収を発表、2026年11月2日には LiveRamp の買収も完了しました。論文の集計では、データ供給会社11社のうち5社が2023年より後に大手グループへ移っています(その1社 Semasio を買った Samba は著者の勤務先です)。

LiveRamp について、FTC は Publicis に競合へのアクセスの維持と情報の遮断、独立監査人による確認を求めました。条件の期間は5年です。Google アド マネージャーの提携先一覧にも Audigent/Experian と LiveRamp が載っています。選定する側が持ち株会社やデータ大手の一部になるほど、そのディールを誰が何のために組んだのかを確認する重みは増す、と筆者は見ています。

「手数料なし」は誰の手数料なのか

論文によると、手数料なしという説明は、どれも1社の取り分だけを指していました。Microsoft と Google は、キュレーターの手数料を入札額から引いてからオークションに回すと文書に書いています。

では、パブリッシャーの手取りは減るのか。Jounce の創業者 Chris Kane 氏は、キュレーションがサプライチェーンのコストを押し上げている様子はないと AdExchanger に語りました。媒体向けコンサルタントの Scott Messer 氏も、手取りはほぼ変わらないと見ています。

筆者はこの指摘を受け止めたうえで、問題は手取りの総額よりも、説明がつかないことだと考えます。Chegg の Linda Chen 氏は、複数媒体のディールでは予算が届く理由が分からず、買い手と改善の話もできないと語る。キュレーションの有無を同じ在庫で比べた公開データもありません。

論文は、キュレーションは品質の購入として売られているが、文書で確かめられるのは取引経路の取り決めだと読み解いています。筆者も同じ意見です。ただし論文が調べたのは公開文書で、効果そのものではありません。効かないと断じる材料にはならない点は押さえておきたいところです。

広告主とパブリッシャーが確かめること

広告主と代理店は、次の5点を対象のディールIDごとに書面でもらってください。

  1. 売り手とドメインの一覧をもらい、sellers.json と突き合わせる。
  2. すべての手数料の金額、計算の基準、支払う側、受け取る側を確認する。
  3. 優先権、下限価格の扱い、リクエストの間引きの設定を確認する。
  4. 品質の主張について、利害のない第三者の測定結果を求める。
  5. 購入後に誰がディールを変更でき、どう通知されるかを確認する。

パブリッシャーは、まず Google アド マネージャーの設定を見てください。ヘルプによると、キュレーション提携先による在庫のパッケージ化は、対応する提携先では初期設定でオンです。Signals の Curation settings で提携先ごとに切り替えられます。レポートでは Curation partner のディメンションで経由分を確認できます(ベータ機能のため、使えないネットワークもあります)。

いきなり止めるより、提携先ごとの eCPM を自社の他の取引と比べてから判断するのが現実的でしょう。Microsoft の SSP でも、Partner Center の画面でキュレーターを個別に止められます。

まとめ

  • Jounce の72.7%はオークション数の割合で、広告費の割合ではない
  • 21製品の公開情報では、ディールの中身も料率も、第三者による効果検証も確認できなかった
  • 手取りが減るかどうかは分かっておらず、買う側も売る側も説明を受けられないことが問題になっている
  • 買う側は5項目を書面で確認し、媒体社は Google アド マネージャーの初期設定を確認する

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